大統領選挙はツイッターが輝くとき
ツイッター買収に関する情報が流れてきたタイミングと、4年に1度の米国大統領選挙は、無関係ではない、と筆者は考えている。全米の人々が最も注目する政治イベントは、ツイッターとの相性が非常に高く、またツイッターの存在価値を人々が認識するきっかけを与えてくれるからだ。
ツイッターは、前述の提携相手であるブルームバーグと組んで、副大統領候補の公開ディベートを中継することになった。すでにヒラリー・クリントン候補とドナルド・トランプ候補の1回目のディベート、そして副大統領候補のティム・ケイン候補とマイク・ペンス候補のディベートを終えている。
2012年、オバマ候補が勝利した大統領選挙では、テレビの中継を見ながら、当時米国でやっと定着したスマートフォンを通じて、ツイッターで意見を述べる「セカンドスクリーン」というカルチャーが一般化した。そして2016年、ツイッターは、モバイルアプリ内で映像を見ながらツイートするワンスクリーンを実現することとなった。
日本人からすれば、フィーチャーフォン全盛の時代から、ニコニコ動画が存在しており、映像や生中継を見ながらコメントを交わすことが10年前から可能だった。何を今更、と思われるかもしれない。しかし筆者が暮らす米国では、フィーチャーフォンを飛ばしてスマートフォンへと移行し、またLTEネットワークの普及によって、やっと実現することができた体験である。
筆者がツイッターについて、長期的な視点において、他のサービス以上に楽観視している理由はここにある。おそらく、ツイッターは、米国の社会が追いついてくるまで、持ちこたえることができると考えているからだ。
2006年に生まれたツイッターは、そのサービスの本質をほぼ変えずに10年間を過ごしてきた。変化したのは、デバイスであり(パソコン→スマートフォン)、通信インフラであり(SMS→3G→4G LTE)、これらを使いこなす人々のモバイル体験だ。デバイスは十分に普及し、インフラの充実も進んだ。あとは人々のモバイル体験というピースが必要で、大統領選挙はそれを埋める格好の材料となる。