装着して実感……映像が体験へと変わる理由
発表会の後はタッチ&トライだ。実際に装着してまず思ったのは、視界に浮かぶように表示される映像が実に美しいこと。
従来機のBT-200ではコントラストが低く、映像が浮かぶというより、ディスプレイが浮かぶ感じだった。一方、BT-300ではヘッドセットのレンズ部分が映像以外の場所はきれいに透過するため、映像以外のものが見えづらくなることがない。映像は滑らか、かつ精細で、洋画の字幕も問題なく読める。
映像に意識を集中すると、他のものは視界に入っていても「あまり見なく」なる。
例えば、レシピを見ながら料理するといった使い方はとても良いと思うが、映画を見ながら料理となると、恐らく映画に気を取られて料理が目に入らなくなる(見えているのに見ていない状態になる)可能性は高そうだと感じた。
プレゼンの際、蟹澤部長が「BT-300によって映像が視聴するものから体験するものへと変わる」と述べていて、そのときは今ひとつピンとこなかったのだが、実際に試してみて良く分かった。
BT-300をいわゆるヘッドマウントディスプレイとして見た場合、映画やゲームを楽しもうとしても、シースルーで外部の風景も見えるため、視界を完全に遮るタイプに比べて没入感はどうしても劣る。だが、逆に現実世界と結びついたコンテンツを楽しんだり、現実世界の楽しみを広げる使い方には圧倒的に向いているのだ。
例えば、現実の風景にイメージを重ねて関連情報を表示したり、位置情報と連携して道案内を表示すると大変分かりやすくなる。観光地や観光施設で見どころを強調、ガイドが表示されるといった使い方はイメージしやすいだろう。
実際、既に凸版印刷と近畿日本ツーリストが共同で、BT-200を使用したスマートグラスツアーを開催済み。参加者がBT-200を装着して史跡を訪れると、史跡が作られた当時の姿が浮かび上がったり、ゆかりの人物(の映像)が視界の中でオーバーラップするという企画を実施している。
皇居の前に立つと江戸城が見えたり、富岡製糸場の工場跡に入れば忙しそうに立ち働く女性たちの映像が浮かんだりといったことがもう実現しているわけだ。もちろん、最近流行りのポケモンGOのようなアプリが登場すれば、BT-300を装着して街中でゲームを楽しむこともできるだろう(社会問題化しそうだが)。
さらに、搭載カメラによる物体認識が可能なので、移動中に標識やランドマークを見落とさないようアラートを出すといった使い方も便利そうだ。こうした使い方は確かに「見る」というより「体験する」と呼ぶほうがふさわしい。
MOVERIOにはコンシューマー向けのほか、業務用や作業現場用のラインナップも用意されている。業務用の「BT-350」は堅牢性を高めて防水機能などを付加したものだが、作業現場用の「BT-2200」はヘルメットへの装着を想定して、作業中に手元に集中したいときのために片手ではね上げて視野を確保できる構造になっている。
こうしたギミックもいずれはコンシューマー向けのモデルにも採用される可能性はあるだろう。BT-300の利用シーンの広がりが楽しみなのはもちろん、今後の展開にも期待を抱かされる発表会だった。