KDDIがlinked-door開発に取り組む狙いは何か。同プロジェクトを担当している上月勝博氏にお話を伺った。

linked-doorの開発を担当しているKDDI商品企画部 商品戦略3グループリーダーの上月氏

電話を進化させるVR

まず、どうして通信会社であるKDDIが、コンテンツ業界の分野と考えられてきたVRを推進しているかについては、KDDIではlinked-doorを、スマートフォンの次にくる「新たなコミュニケーション」として提案していきたいという回答だった。電話の延長線上にある技術としてVRを捉えているわけだ。KDDIはVRを使って、その場にいながら、実際に会っていなくても「同じ空間で体験を共有する」次元にコミュニケーションを進化させたいという。

VRの活用事例としては、たとえば製品の3Dデータを囲みながら、本社と開発センター間でVR会議を行うというような使い方も面白いだろう。VR HMDが個人でも入手しやすくなれば、VR内でのマルチプレイヤーゲームにも使えそうだ。コミュニケーションツールとしての発展余地は大きい。

テキストや音声と比較して、情報量が多いVRは通信には不向きに思えるが、実際の通信量は数百kbps程度で済み、あとはクライアント側に依存するという。これならモバイル回線でも十分に通信が可能だ。スマートフォンやVR HMDのスペックが向上すれば、アバターの表現を高度化することも検討したいとのこと。方向性としては、利用者が写真を取り込んでアバターに反映させたり、外部のカメラなどを使ってリアルタイムに自分自身をVR空間に映し出したりできるような形を思い描いているという。

通信インフラの充実でVR体験の質も向上

KDDIが扱うスマートフォンやVR HMDの性能には機種ごとに差がある。こうした性能差はKDDIで統一するわけにはいかないので、サーバー側でGPU処理を行い、レンダリング結果だけを送信することで性能差を吸収することも考えているそうだ。特に通信が5Gになって低レイテンシーの通信が可能になれば、こうしたサーバーサイドのレンダリングも実用的になるという。

コミュニケーション手段としてのVRの活用に加え、これまではサードパーティが担っていたVRコンテンツの配信も、KDDIが参入していくという。ただし、全てをKDDIがコントロールするのではなく、特に制作分野ではさまざまなパートナーと協力して、まずはVRの普及を目指し、マーケットを作ることを優先して進めていくつもりとのことだった。