PC市場の停滞に対して、ワークステーション市場は堅調に成長している。CAD/CAM分野や映像制作などをはじめとして、ワークステーションが主戦場とする領域では、企業の投資意欲はPCほど衰えていない(むしろ旺盛ともいえる)。

ワークステーションに求められるのは、性能はもちろん、何といっても信頼性だ。ハードウェアを構成している個々のパーツはPCと大差ないが、多彩な環境における動作検証や信頼性のテストが入念に行われている。とにかく故障しないことを重視して設計、検証、製造されている点が、PCとの大きな違いといえるだろう。

世界を見渡すと、ワークステーションのベンダーとしては、米Dellと米Hewlett-Packardが二強だ。そこに、Lenovoや富士通、東芝などが続く。先日、米Dellでワークステーション事業とマーケティングを統括するキーパーソンにお会いする機会があったので、ワークステーション分野のビジネスと将来に関して話を聞いた。

写真左が、DellのPrecisionワークステーション事業担当ディレクター Rahul Tikoo(ラウール・ティクー)氏、写真右がDellのPrecisionワークステーション担当マーケティング・ディレクター Pat Kannar(パット・カナー)氏。両氏の後ろが製品群で、ラウール氏が手に持っているのが薄型軽量の15.6型「Precision 15 5000」シリーズ

―― はじめに簡単な自己紹介をお願いします。

Rahul Tikoo(ラウール・ティクー)氏「DellでワークステーションのブランドとなるPrecisionシリーズのエグゼクティブディレクター兼ジェネラルマネージャーをしております」

Pat Kannar(パット・カナー)氏「ラウールのもとで、ワークステーションのプロダクトマーケティング・ディレクターをしています」

―― 基本的な質問になりますが、Dellの「Latitude」と「Precision」の違いはどこにありますか?

ラウール氏「ビジネス向けPCブランドの『Latitude』は、一般ビジネスマンを考えた性能と価格を主眼にしています。一方、ワークステーションのブランド『Precision』は、プロフェッショナルなクリエーターのために設計されています。例えば、自動車や航空エンジンの設計、映画やアニメーションの制作、石油などのエネルギー開発、ヘルスケアの研究……といったユーザー層です。

Precision 15 5000シリーズ (モデル#5510)

このPrecision 15 5510は、外見は通常のノートPCと同じように見えますが、高性能なIntel Xeonプロセッサや、さまざまなプロフェッショナル・ソフトウェアと認証が取れたGPUを搭載しています。パフォーマンスと信頼性が向上しているのです。

ワークステーションを利用するエンジニアは、AutodeskやAdobeのソフトウェアを利用することが多いのですが、Precisionは、こうしたプロフェッショナル・ソフトウェアの認定を受けています。ユーザーは、Dellからでもソフトウェアベンダーからでも、適切なサポートが得られるわけです」

―― 世界的なワークステーション市場のトレンドを教えてください。

ラウール氏「グローバルでは、大きく3つのトレンドがあります。

1つ目はモビリティへの移行で、ノート型ワークステーションの市場が伸びています。2つ目は仮想化で、手元のワークステーションだけで計算を行うのではなく、会社のデータセンターにあるラックマウントタイプのワークステーションを使うという流れです。最後の3つ目が没入型テクノロジーといって、いわゆるVRやARを意味します」

―― 日本のトレンドはどうでしょう。グローバルと同じでしょうか?

ラウール氏「日本では、まだデスクトップ型ワークステーションが中心です。ただ、設置スペースの問題があるため、ノート型、そしてクラウド型や仮想型のワークステーションにも、期待が高まってきています。

具体的な数字を挙げると、欧米ではノート型が3分の1程度を占めており、成長率もデスクトップ型を上回ります。日本では、これまで約90%がタワー型のワークステーションです。そうした背景もあり、Dellは日本市場に特化したスモールフォームファクターの製品を投入しました。従来のタワー型と比較して、約40%小型化しつつ、同等の性能を実現できるようにしています」

スリムタワー型の「Dell Precision Tower 3000シリーズ(モデル#3420)」は、プロセッサにIntel Xeon、GPUにNVIDIA QuadroやAMD FireProなど、ハイエンド構成が選べる