WM1ZとWM1Aの試聴は、バランス接続とアンバランス接続それぞれを実施した。前者は(試し聴きを兼ねて)新フラッグシップヘッドホン「MDR-Z1R」を、後者は「Shure SRH1840」を利用している。音源は、PCMがRalph Towner, John Abercrombie「Five Years Later」(FLAC 96kHz/24bit)と、Norah Jones「Come Away With Me」(FLAC 192kHz/24bit)。DSDがJosep Colom「Mozart & Chopin - Dialogues」(DSD 11.2MHz)という聴き慣れたものをチョイスした。
WM1Zをバランス接続で聴くと、まず音の輪郭の明瞭さに驚かされる。低域にその傾向が顕著で、ピアノのアタックは余韻が滑らかに伸び、箱鳴り感まで忠実に再現する。ドラムはフットペダルの踏み込みがリアルで、空気が排出される気配・音圧がわかるかのよう。DSDネイティブ再生は自然な印象にまとまっているが、PCM変換のときを思い出してみると、音の立ち上がり/立ち下りがすばやく、ピアノの微妙なタッチまで感じさせる描写力には明らかな差がある。
アンバランス接続の音にも進歩が感じられる。チャンネルセパレーションや音場感はバランス接続に一歩譲るにしても、低域には解像感があり余韻の響きもクリアで、従来モデルと比べS/Nの改善は確かだ。DSD再生はPCM変換とはなるものの、余韻には階調を感じさせ響きもナチュラル。ネイティブ再生時とのニュアンスの違いはあるが、満足度は高い。
WM1Aの音はというと、低域の解像感とボーカルの定位感はWM1Zと同じテイストを感じさせはするものの、ややあっさり傾向。その理由はシャーシの素材の違いにあるのか、アンプ部とヘッドホン端子をつなぐ線材の違いにあるのか、音質抵抗など一部のパーツの違いにあるのかはわからないが、音のキャラクターの違いは想像以上だ。
WM1Zの内部写真(左)。アンプ部からヘッドホン端子への線材に4芯Braid構造ケーブルが使われていることがわかる |
WM1Z(左)とWM1A(右)の端子部。WM1ZにはKIMBER KABLEの技術を活用したケーブルを採用している |
ZX1/ZX2からの変化でいえば、シャーシやパーツ構成などハードウェアの違いはあるにせよ、"全方向展開"を捨てたことも音に現れているように思う。特に、2015年秋発売の(ZX100)から始まったことだが、OSをAndroidから独自OSに変更したことだ。Wi-Fiやアプリといった利便性の部分は大幅に後退したものの、電磁波の影響が格段に減少、それが音質に現れているようだ。ハイレゾ再生というディテールが重視される分野だからこそ、この決断はプラスとなって現れたと考えたい。
最後に、WM1AとWM1Zどちらを選ぶかだが、これがかなり難しい。推定市場価格(税別)はWM1Aが12万円前後、WM1Zが30万円前後とダブルスコア以上の価格差があり、予算に上限があるのならば結論は決まったようなものだが、そうでなければ……どう判断するかは、店頭や試聴会に足を運んでからでも遅くはないだろう。