DSDネイティブ再生は新設の回路で行われる。
ウォークマンは2009年発売のNW-X1000シリーズ以降、フルデジタルアンプ「S-Master」を核として設計され、ハイレゾ対応を前面に打ち出すZX1から採用が始まった強化版「S-Master HX」に代替わりしたあとも、基本的な設計コンセプトは維持された。
S-Masterを採用する利点は、DA変換なしに増幅処理することやジッターの管理を徹底していること、それらの結果として得られる歪み・ノイズを最小限に抑えた忠実なデジタル再生にあるが、DSDの信号は入力できない。回路が別なため、DSDネイティブ再生はバランス接続時のみの対応で、従来のアンバランス(シングルエンド)接続ではPCM変換となるが、S-Master HXの利点を引き継ぎつつDSDネイティブ再生を可能にしたことは、ある種のウルトラCと言っていいだろう。
そのバランス接続だが、4.4mmバランス端子の採用はDAPで初のこと。この規格は、一般社団法人 電子情報技術産業協会(JEITA)が定める音楽鑑賞用ヘッドホン規格「RC-8141C」を改訂、GNDを加えた5極1本の「ヘッドホン用バランス接続コネクタ」として追加されたもの。現在はメーカーごとにまちまちな(DAP用)バランス端子の統一規格となりうる存在であり、今後は準拠したヘッドホン/ケーブルも増えるはず。一歩先を読んだ対応、と前向きに評価すべきではないだろうか。