スマートフォン市場の飽和に向けた一手
こうした一連の取り組みから見えてくるのは、コンシューマー向けのスマートフォンに依存したビジネスから抜け出し、多角化を進めて安定したビジネスにつなげるかという、ソニーモバイル側の狙いである。
確かに、今年2月に実施された世界的な携帯電話見本市イベント「Mobile World Congress 2016」で、ソニーモバイルが新製品として発表したのはスマートフォンだけではなかった。音で話しかけるだけで操作でき、さまざまな情報を知らせてくれる「Xperia Ear」など、スマートフォン以外のデバイスにもXperiaブランドを冠し、幅広い分野でインテリジェントな機器を提供していく方針を示すなど、スマートフォン以外にも注力する姿勢を見せていたのだ。
ではなぜ、ソニーモバイルがスマートフォン依存からの脱却を急いでいるのかというと、やはりスマートフォン市場の飽和が見えてきたことが影響しているのではないだろうか。ここ数年で急速に普及したスマートフォンだが、最近では先進国だけでなく、新興国でも普及がある程度進んだことから、市場の伸びが急速に落ちてきている。普及が一巡した後に待ち構えているのは、現在のPC市場が陥っている、一層の価格競争とパイの奪い合いである。
ソニーモバイルはアップルやサムスン電子などと比べ、スマートフォンメーカーとしては規模が小さいことから、規模を強みとして生き残るのは容易ではない。それゆえ同社としては、スマートフォンのビジネスはハイエンドモデルへの絞り込みを進め確実な顧客獲得につなげる一方、法人やスマートフォン以外の市場を積極開拓し、スマートフォン市場の変化だけに業績が大きく左右されない、安定した収益基盤を得ることが必要となっている訳だ。
そしてそうしたビジネスの拡大は、ソニーが中期経営計画の柱に据える、安定した顧客基盤を確保し、継続的に売り上げを得るリカーリング型の事業強化にもつながってくる。スマートフォン市場が曲がり角にさしかかりつつある今後、ソニーグループ全体の業績にこれ以上マイナスの影響を与えないためにも、ソニーモバイルは法人向けのビジネス拡大など、従来のイメージとは異なる取り組みを強化していく可能性が高いといえそうだ。