2014年の販売不振を機に法人ビジネスにも注力
実はここ1、2年のソニーモバイルの動向を振り返ると、今回の取り組みがそれほど不思議ではないことが見えてくる。まずは同社の現在の状況について、簡単に振り返っておきたい。
ソニーモバイルはここ最近、スマートフォン市場の急激な変化によって不振にみまわれていた。その発端となったのが2014年、スマートフォンの市場拡大を受け、スマートフォンの販売目標を5000万台に大きく増やすなど、強気の戦略をとったことにある。
だがこの年は丁度、低価格モデルに強みを持つ中国メーカーが、スマートフォン市場で急速に台頭した時期でもある。ソニーモバイルは中国メーカーの価格攻勢に遭って販売不振に陥り、ソニー全体で巨額な損失を出す要因にもつながってしまったのだ。
そうしたことからソニーモバイルは、社長を元ソネット(現・ソニーネットワークコミュニケーションズ)副社長の十時裕樹氏に交代するとともに、低価格帯モデルの販売を減らし、強みを持つ高価格帯のハイエンドモデル主体にシフト。それに伴い販売地域も絞り込むなどの再建策を実施。今年の4~6月期にようやく黒字回復するなど、現在はようやく業績回復の兆しが見えてきたところである。
その業績回復の過程で、同社はXperiaの新シリーズ「Xperia X」を打ち出すなど、コンシューマー市場に向けた取り組みをいくつか実施しているが、実は一方で法人向け市場開拓に向けた取り組みにも力を入れてきている。実際、法人向けIT関連企業の出展が多い、昨年10月の総合IT見本市イベント「Japan IT Week 秋 2015」では、ソニーモバイルがブースを構え、同社のタブレットなどと組み合わせた法人向けソリューションの展示を実施していた。
また新事業開拓の面でも、法人向けを重視した取り組みを見せている。2015年8月、ソニーモバイルがZMPと共同で「エアロセンス」という会社を設立しているのだが、この会社はZMPが強みを持つ自動運転技術と、ソニーモバイルが持つ通信やセンサーの技術を活用し、自立型無人航空機と画像処理を組み合わせた産業用ソリューションを提供するのが目的とされている。
自動運転は高い注目を集めている一方、法整備の問題などがあることから、私有地以外での展開が難しいという現実がある。しかしながらこうした新技術を、ソニーのブランドが生きるコンシューマー向けではなく、法人向けを前提に取り組むというのは、従来のソニーモバイルでは考えにくい展開だといえよう。