お国言葉で写真を撮る
大会直後の速報で伝えた通り、第23回 写真甲子園は、島根県立大田高等学校が初出場・初優勝を果たした。セカンドステージの公開審査会で、審査委員長の立木義浩氏と同校キャプテンの柿田知保実さんとの間にこんなやり取りがあった。
立木氏「曇天が上手ですよね。この前のも (ブロック審査会でも) 曇天だったよね。あの時間帯が好きなの?」
柿田キャプテン「山陰は暗い空が多いんです」
立木氏「それは、ふるさと志向というか、そういうものを持っているんだよね。お国言葉で写真を撮ってもらう大会にしたいと、前々から思っていたので、これは嬉しいです。明日はもっと、どろーんとした写真を撮ってください (笑)」
実は同じ日の公開審査会で、審査委員の長倉洋海氏は他校にこんな苦言を呈していた。
長倉氏「写真はうまいなぁ、と思いました。しかし、参加校全体に言えることなんだけど、オリジナリティに欠けていると思う。うまく撮れているし、いいものが写っているんだけど、どこかで見たデジャビュ、既視感がある。同じものを撮っていたら優勝はできない。同じものを撮るなら、一段も二段もさらに上を目指してほしい」
つまり、高校日本一を決めようという写真甲子園の舞台では、上手に撮れるだけでは評価されない。長倉氏が言うように、一段も二段も上の写真で構成するか、立木氏が言うように、そのチームが持つ独特の雰囲気を写真にこめるか、見る者を驚かせるプラスアルファが求められる。
その点、島根県立大田高等学校のファイナルステージ作品は、撮る前の考え方からして脱帽もの。ちなみにファイナルステージで各校に与えられた作品テーマは「ふれあい」である。
柿田キャプテン「(写真甲子園では人に) 写真を撮らせてもらおうとお願いして、断られることもありました。『人と触れ合うのは難しいな』。同じ気持ちを (被写体の) 子どもたちも感じていたのではないかと思い、それを表現しました」
この作品を見て立木氏は次のようにコメントしている。
立木氏「ちょっと暗い、という基本的な姿勢を崩さずに、一人も笑っていないところが気に入りました。とくに5枚目。多少の怖さみたいのが出ていて、『ふれあい』というテーマに隠れているものが、自分たちが計算しなくても出ています。3日間を通して筋を曲げないで撮ったよね、そこが素敵だと思った」
※ 作品写真、すべて写真甲子園実行委員会提供