アップルに残された2つの光
新興市場ではなくなった中国と、新たな市場としての難しさをにじませるインド。しかしアップルは、直近の決算において、2つの光を見出している。
マイナスが並ぶアップルの2016年第2四半期決算のサマリーの中で、前年同期比で3つだけプラスだったカテゴリがある。そのうちの1つは日本市場での売上だが、後の2つは、注目すべきだ。
1つ目はiPadの売上高の7%上昇だ。販売台数は前年同期比9%減と減少させているにもかかわらず、売上は上昇した。つまり、販売単価が上昇したことを意味している。これは、3月に発売したiPad Pro 9.7インチモデルの影響と考えられる。
iPad Proには、明確に「(古い)PCの代替」という位置づけを与え、本体価格は100ドル高い599ドル(32GBモデル)に設定されている。iPad Air 2が100ドル値下げしてなお、売上高が上昇している点に注目すれば、iPad Proの販売増加は、iPadカテゴリの売上増を後押しする。
付加価値の高いデバイスの販売が伸びることは、アップルらしい戦い方と言える。前述のように、iPhoneは他のメーカーのスマートフォンよりも、多くの市場で2倍前後の値付けだ。そのため販売台数を落としているが、他方、スマートフォン販売から得られる利益のシェアは7割を超えるなど、薄利多売に陥らないポジションを維持してきた。
iPhoneが単独でスマートフォン市場を盛り立てる可能性は、ほぼないことを考えれば、高い利益率を維持できるビジネスを続けることのほうが、販売台数を追い求めるよりも良い、と見ることができる。
その戦略で進むべき、と語りかけるのが、決算書サマリーの中のもう一つの「プラス」だ。アップルは2016年第3四半期決算で、サービスカテゴリを前年同期比で19%成長させた。ここには、App StoreやApple Music、Apple Pay、iCloudなどが含まれている。これらの売上は、iPhoneが利用されればされるほど上昇値続け、季節などによって大きな変動の影響を受けにくい。
前掲のサマリーにはまだ含まれていないが、大ヒットとなったPokemon GOの売上の3割は、このサービスカテゴリに計上されることになる。裏を返せば、iPhoneを使う上でアプリやサービスにお金を使わないユーザーを集めても、持続的な売上につながらないことを意味する。
今後、中国にしてもインドにしても、アプリ開発に対する投資を大きくしていくと考えられ、その結果としてiPhoneの魅力を大きくする戦略を採っていくと考えられる。前述のインドへのiOS開発センターの設置や、中国最大のタクシー配車アプリ「滴滴出行」への10億ドルの投資などで、その戦略は顕在化しつつある。