Appleは小さなグループでのテストを始めた。車椅子を日常利用している従業員にも参加してもらったという。さらに、Challenged Athletes FoundationやLakeshore Foundationといった団体を通じてテスターを募り、研究を行った。そのテストは300人あまりの人々を対象に、3,500時間、700項目、1年にも亘ったという。

300人ほどのテスターによる1年に亘る研究の成果がまもなく

テストを始めると、人々はそれぞれ、異なるタイプの車椅子に乗っていることがわかり、人によって好みも分かれることにも気づいた。こうした様々なタイプの車椅子の存在を考慮しながら、「プッシュ」によるカロリー計算のアルゴリズム作りを進めていったが、ここで次の問題にぶつかる。

歩行している人にとって、その路面が舗装路なのか板の間なのか、はたまた絨毯なのかは、さほど大きな違いではない。でこぼこした砂利道となると歩きにくいし、つるつると滑るぬれたタイルやシャーベット状の雪になって初めて、歩き方を変えて転ばないようにする。多少の段差も、つまづかなければ問題にならない。

しかし車いすでは、こうした路面の状況すべてが影響してくる。舗装路よりも絨毯の方が車輪が転がりにくく、より多く漕がなければ同じ距離を進むことができない。またちょっとした段差や傾斜に応じても、漕ぎ方を変えて対処する必要がある。

つまり、前述のように、手のストロークの違いで「プッシュ」とその強度が検出できるようになったとしても、こんどは車椅子の路面状況を考えなければ、カロリー計算や移動距離におとしこむことができない、というわけだ。

歩行とは違う、数々の困難を解決しながら、車椅子に対応するApple Watchのソフトウェアが練り上げられていった。