フレデリック・コンスタントのスイス本社。1904年から続くダイヤル工房が前身

そこで“白羽の矢”が立ったのがフレデリック・コンスタントだ。同ブランドは15~50万円ぐらいの機械式時計を得意とする。創業は1988年と、機械式腕時計メーカーとしては“新参”といわざるを得ないが、自社でムーブメントを製造できる「マニュファクチュール」である。そして、時計の精度を司る「テンプ」部分がダイヤル(文字盤)側から見えるようにした小窓「ハートビート」を、世界で初めて採用したメーカーとしても有名だ。近年では、スイス製として初めて“スマートウォッチ”をリリースしたことでも知られている。

最高峰技術が求められるトゥールビヨンも展開

ハートビート マニュファクチュール「FC-945MC4H6」。ダイヤル下部の窓がハートビート。そのほかブレゲ針やギョーシェ彫りが施されている

それだけでなく、機械式腕時計の世界では“最高峰の技術が必要”とされる「トゥールビヨン」も手がけている。15~50万円の価格帯を得意とすると前述したが、トゥールビヨンともなれば数百万円はくだらない。マニファクチュールであること、トゥールビヨンを手がけていることなどから、新参ながら市場での技術的な評価は高い。

ブローバの音叉時計「アキュトロン」の広告。当時を物語る貴重な資料だ

実はシチズン時計は、ここ数年、立て続けにM&Aを行っている。2008年には米ブローバを買収。ブローバは1960年に世界で初めて音叉式の腕時計をリリースし、技術的な評価を獲得。以来、アポロ計画に積極的に参画するなど、“アメリカの象徴”ともいえる腕時計メーカーだ。

シチズン時計とのつきあいも古く、音叉時計のテクノロジーをシチズンに供与し、日本産音叉式腕時計の誕生にも一役買っている。なお、両社の合弁企業として設立したブローバ・シチズン社は、現在、小型チップLEDや光センサーといった、電子デバイス上流部品を扱うシチズン電子に姿を変えている。