SiriKitを用いたアプリの機能呼び出しには、必ずアプリ名を命令文に含めなければならない。例えば、「UberXをSFOまで移動」「SFOまでLyftで移動」「LINEでAさんに、5分遅れます、と送る」といった具合だ。ここで、いくつかのことに気づくかもしれない。

Uberを予約する際に、「UberX」というオプションを含めることができる。ちなみにUberには、配車オプションとして、UberPool、UberX、UberSELECT、UberBLACK、UberACCESSといったオプションがあり、これらを指定しての予約が可能となる。

UberやLyftの例では、「SFO」(サンフランシスコ国際空港)という行き先を命令に含めている。また、LINEでは、宛先である「Aさん」を入れている。

前述の通り、Siriから各アプリにリクエストを送る際にオプションを加えられるが、アプリ開発者は、そのオプションを認識しやすいよう、独自の辞書を用意してSiriの認識を補助できる。もちろん、ここでは言葉の取り合いになることが予測されるのであるが。 動詞化するアプリは強い

また、メッセージを送るだけでも、何通りも言い方がある。WWDC16の基調講演で紹介していたWeChatの例では、以下の4つのパターンが挙げられていた。

  • WeChat Nancy I'll be five minutes late.
  • I need to send Nancy via WeChat saying I'll be five minutes late.
  • Tell Nancy I'll be five minutes late via WeChat.
  • Siri can you shoot a message on WeChat and say that I'll be five minutes late.

いずれも、ナンシーに「5分遅れる」というメッセージをWeChatで送るという命令だ。この中で、最もシンプルなのが、1つ目の例、「WeChat Nancy I'll be five minites late.」という例。アプリ名である「WeChat」を「WeChatでメッセージを送る」という意味の動詞のように使って、Siriに命令しているような構文だ。

これが一般的かどうかは分からないが、例えばUberやLyftも、「車を予約して移動する」という意味の動詞としてとらえれば、「UberX me to SFO」(SFOまでUberXで移動)という命令は非常にシンプルだ。おそらくiOS 10のSiriでも、こうしたリクエストを受け付けてくれることになるだろう。

アプリ名が、特定の動作を表す「動詞」になれるアプリは、Siriを含む音声アシスタントへ命令するのに非常に親和性が高いことが分かる。

WeChatを例にしたメッセージ送信の例。様々な言い回しでの利用が可能になる。アプリ名はどのアプリで何をするのかを示す最適な「動詞」になり得る

日本語ではこうした構文を作るのは難しいかもしれないが、「Aさんに、遅刻しますごめん!、とLINEする」は通じるだろう。「成田空港までUber(する)」も成立している。 ただ、東京で利用できるタクシー配車アプリ名を見ていると、こうした動詞化は難しそうに見える。「羽田空港まで日本交通する」というタクシー配車予約は無理がある。「羽田空港まで東京無線」、これはちょっとアリかも知れない、と思うが。

やはり、Siriに対して、「タクシーで羽田空港まで」と行った方が自然だし、この「タクシーで」という部分は日本交通や東京無線、また東京ではタクシー配車と紐付けているUberなどと、言葉を取り合うことになる。

そうした言葉の取り合いに巻き込まれるよりは、LINEやUberといったアプリ名で音声アシスタント経由で使ってもらった方が、ユーザー体験としては高い、ということになるはずだ。