アップルは中国投資をアピールするため?
テクノロジー企業がライドシェアリングアプリに投資している理由は、それぞれだ。最も意図を汲みやすいのは、アップルによる中国・滴滴出行への投資だ。アップルは、中国政府・当局との関係を良好に保ちたいという意識があり、共産党の幹部ともパイプのある創業者の企業から、同社の将来にわたる戦略に関連しそうなアプリを選択した、という位置付けに見える。
滴滴出行は、中国最大の配車アプリに成長しており、ユーザー数は3億人以上、1日のリクエスト件数は毎日1100万件にものぼり、シェアは87%だ。数年後に米ニューヨーク証券取引所への上場も視野にあるという。
こうした企業がアップルからの10億ドルの投資を受ける必要があったか、と言われると、若干の疑問も浮かぶ。そのため、アップルの中国投資をアピールする材料としての側面を強く意識させるのだ。また滴滴出行としても、中国でも急伸するUberを食い止めるコストがかかっていることも事実。アップルによる支援を断る理由も特に見当たらない。
電気自動運転車のプロジェクトといわれる「Project Titan」の噂がささやかれるアップル。それが実際の自動車を製造する事になるのかは定かではないが、もしApple Carが登場するなら、滴滴出行はその上顧客になり得る。
本気で取り組んでいるグーグル
グーグルは、より現実的に、人々の移動をなんとかしようと考えているようだ。これまでも、Lexus RXをベースにした自動運転車を公道で走らせており、筆者が住むカリフォルニア州バークレー市でも、そのあまりに自然かつスムーズな運転ぶりを見かける。
また2016年5月に開催された開発者会議Google I/O 16には、電気自動運転車のプロトタイプを展示していた。室内にはハンドルはなく、広々とした空間にソファーがあるだけ、といった雰囲気だった。
自動運転の電気自動車を現実のものにしようとするなら、前述の滴滴出行とアップルの関係のように、ライドシェアリングサービスとのマッチングは現実的な活用方法となる。グーグルは、Uber、その競合にあたるLyftに、自動車メーカーのフォード、ボルボを加えて、自動運転車に関する研究開発をスタートさせている。
グーグルは、Googleマップを提供しており、経路検索はスマートフォンアプリの中でもキラーサービスとなっている。渋滞情報、公共交通のデータ、そして買収したWazeによるユーザー投稿のデータを組み合わせて、より早く、確実に目的地にたどり着くことができる情報を提供してきた。
そのGoogleマップとUberの配車情報は統合し、経路検索には、運転、公共交通機関、徒歩、自転車に加え、Uberを利用した場合の到着時間と料金も合わせて表示されるようになった。
グーグルは情報の検索するだけでなく、検索結果で得た情報を、いかにそれを現実のものに変えられるか、に取り組んでいる。情報を行動に変えることが現在のモバイルビジネスにとって重要なのだ。