筆者はiPhoneの検索画面を多用している。Siriの検索候補に上がるコンタクト先やアプリを利用することも多いし、メールやノートなどの内容を検索して、アプリの中のコンテンツを直接開くこともある(ディープリンク)。
この機能は着実に操作数と時間を減らしてくれている。しかし、Googleがより深い知識を返答したり、サービス感を連携させながら目的を果たしている様子に比べると、地味で消極的に見える。
その理由は、Appleが、プライバシー、セキュリティを優先するポリシーを敷いていることに起因しているのだ。
2016年3月にあっけない結末を迎えたFBIとの間で争われたiPhoneのロック解除問題では、犯罪操作のためであってもロック解除ができない、そのためのソフトウェア開発も行わない、という姿勢を貫いた。個人のデバイスであるiPhoneの中身を見ることについて、技術的に放棄していると印象付けることに、結果として成功したと思える出来事だった。
また、Appleは、IBMやCiscoなどとの提携により、自社のデバイスをビジネス市場へ拡大させていきたい思惑がある。中国での生産ながら、米国企業がコントロールするほぼ唯一のモバイルデバイスというポジションを利用して、米国企業が安心感を持って導入できるブランドを確立したいという考えだ。
データや通信の暗号化を含めて、安全性が高いというブランドであるとのイメージを作り上げているAppleにとって、人工知能の成長は、トレードオフの関係にある。
機械学習を加速させるのは、実際のユーザーの利用データを集約して分析することが早道となる。そのためには個人情報や企業の情報を含むiPhoneの中のデータを、Appleが集めて利用する必要がある。これはリスクをとるということを意味する。送信の過程で傍受されるかもしれないし、そもそも機密情報をAppleが握ること自体が、安全なブランドというポジションを危うくすることになるからだ。