本連載では繰り返しとなるが、iOS 10では、より多くのことを、アプリを開かずに済ませよう、という発想が通低しているように感じられる。

リッチ通知や、ここで用いられるカード型UIは、アプリの中に閉じていた機能を外に持ち出せる仕組みを作っている。またホーム画面でのウィジェット表示やコントロールセンターでの3D Touchを使った機能設定も、アプリを開かずに情報を活用したり、設定を済ませられるようにしている。

iOS 10では、いかに3D Touchを使いこなすかで、その快適さが決まってくる、そんなイメージを抱くようになった。

ただし、3D Touchを搭載しないiOSデバイスではどうなるのであろうか。

筆者がこの原稿を書いているiPad Pro、1世代前のiPhone 6・6 Plus、そして2016年3月に発売されたiPhone SEは、3D Touchを採用していないため、本稿で紹介したような3D Touchによる軽快な操作方法を再現することはできない。

3D Touchの操作のうち、一部の機能を通常のディスプレイで再現しているものもある。例えばLive Photosの再生は、写真を押し込む代わりに長押しすると、触れている間にビデオが再生される仕組みだ。また、iPadの場合は、カーソル移動は、2本指でキーボードをタッチすることで実現している。

例えばリッチ通知を開く動作や、コントロールセンターでのショートカットの表示などは、長押しで代用することもできるだろう。しかしホーム画面でのクイックアクセスメニューについては、すでに長押しがアプリの移動や削除に割り当てられていることから、他の方法を考えなければならない。

個人的には、長押しでショートカットやウィジェットを表示した方が、ユーザー体験としては良くなりそうだが、iPhoneにApp Storeが登場して以来8年間続くアプリの削除の操作方法を変更するコストは大きいし、3D Touch搭載デバイスでも納得のいく、新たな削除モードへの操作方法を用意する必要があると感じている。

松村太郎(まつむらたろう)
1980年生まれ・米国カリフォルニア州バークレー在住のジャーナリスト・著者。慶應義塾大学政策・メディア研究科修士課程修了。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。近著に「LinkedInスタートブック」(日経BP刊)、「スマートフォン新時代」(NTT出版刊)、「ソーシャルラーニング入門」(日経BP刊)など。ウェブサイトはこちら / Twitter @taromatsumura