周りの理解は必要不可欠
――女性が働きやすいよう工夫していることがわかりました。ただ、育児休暇や時短勤務は、現場の上司の理解も大切だと思いますが、その点はいかがですか。
産休・育休からの復職に不安を感じるという声が多かったため、復職前に店長と面談の機会を設けています。大型店の場合でも、店長が個々の問題をきちんと把握できるように面談シートを活用しています。
このほか、オリジナルのハンドブックを作り、店舗の幹部に配布しています。育児に関する制度を紹介するほか、モデルケースを載せて、育児中のスタッフ(部下にあたる)がどんな1日を過ごしているのかイメージしやすいようにしました。ハンドブックを読んだ男性店長からは、「お母さんは休みの日でもこんなに大変なんだね」という声も出ていますよ。
――上司以外にも、同僚の理解を得る必要があると思います。社内の時短勤務者が増えることで、通常勤務者から不満は出ないでしょうか。
難しい問題ですね。ビックカメラには主婦の方がアルバイト社員として多く働いていることもあって、時短勤務者に限らず人員確保が大変な時があります。
そこで、曜日・時間帯ごとの来店客数と売り上げに対して何人のスタッフが働いているのかをグラフ化し、無駄のない人員配置ができるよう「みえる化」しています。
ただ、現在のところアルバイト社員、時短勤務者に対して現場から不満の声はそれほど聞かれません。現場の幹部が調整してくれているのもあると思いますが、子育て中の女性幹部の存在が大きいと感じています。
子育て中の女性幹部は自分たちの経験を交えながら、同じく子育て中の女性社員の相談相手になっているようです。「働くからには短い時間でも結果を出そう」「周りに感謝の気持ちをしっかり伝えよう」などと話してくれています。それを聞いて女性販売員はやる気になるようです。
そして子育て中の女性社員ががんばっている姿をみると、他のスタッフの理解も深まるのだと思います。若手社員が、先輩社員の姿をみて「先輩たちみたいになりたい」と憧れているという話も聞きました。互いにいい影響を与えるスタッフが多いのでしょう。
――今後の展望について教えてください。
女性社員に限った話ではありませんが、なるべく長く働き続けてもらえるよう、会社としてサポートを充実させていく考えです。女性の店長代理・副店長をもっと増やしたいですし、さらには女性店長も誕生してほしい。現在、女性社員が増えていることもあって、後輩社員を育成できるような女性幹部をもっと増やしていきたいですね。
臨機応変に対応していく風土
ビックカメラの強みのひとつが、世間の話題や流行にあわせて売り場を変化させていく「柔軟さ」だ。商品の展示だけでなく、店内レイアウトさえも頻繁にリニューアルしている。これは、販売スタッフ一人ひとりの積極さだけでなく、現場の意見を吸い上げて実行できるような企業風土があるからこそできることだ。
ビックカメラに限らず、家電の販売現場では、女性スタッフの力が重要とされている。ビックカメラでは、女性が活躍できる環境を整えることで、企業全体の発展にもつながっていくと確信し、体制整備に力を入れている。ここにも「現場の声を実行できる力」が生かされている。
※この記事は「月刊IT&家電ビジネス 2016年6月号」に掲載された記事を加筆・再編集したものです