餅も麺も!? 売場作りまで参加
アイリスオーヤマは2013年に米事業へ参入して以降、「毎年2倍くらい成長している」とのことで、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いだ。2016年度の販売計画は150億円。これも現時点では、ほぼ計画通りの売上を記録しているという。
ここまで来たのは製品自体の魅力のほかに、それをたくみに周知してきたからだ。テレビCMなどのほか、ホームセンターではめずらしい試食販売を行っている。山田氏は「食べないとおいしさが伝わらない。まだ割高だが、試食をすれば2~3割の人が買っていく。そのくらいおいしさが違う」と自信たっぷりだ。試食販売はなかなか手間のかかる方法ではあるのだが、「米事業を長い目でみており、今は投資の段階」(山田氏)というアイリスオーヤマにとっては、出会いを作る好機といえる。
冒頭でアイリスオーヤマの手広さについて紹介したが、売場の什器も手がけている。パッと目を引く「米ぐら売場」を展開しており、通年で米を販売。米の売上が落ちる夏にはそうめんなど乾麺(2016年から導入)、冬には季節柄よく売れる餅を売るなど、売場作りにもイチから参加しているのがアイリスオーヤマの強みだ。米ぐら売場を設けることで、ホームセンターで米を買う習慣を徐々に定着させていくねらいもあるのだろう。
今後は生鮮米を海外にも
現在の売上は小袋パックと大袋パックでおよそ3:7といったところ。小袋パックはそんなに多く米を食べないシニア世代、大袋パックはファミリーから支持されている。ただ、山田氏は「今後は小袋パックが伸びていきそうだ」と予測。さまざまな品種を少しずつ食べ比べできる「生鮮米 食べ比べギフトセット」などが好調なことも理由のひとつとして挙げられる。
成長してはいるが、山田氏は「まだまだこれから」という姿勢をみせる。ホームセンターやコンビニ、スーパーなどで販売するほか、社員食堂などでの採用に向けてアプローチしている最中だとか。日本だけでなく、マレーシアやアメリカではすでに販売しており、今後も海外への展開を進めていく。
もとは復興支援で始まったアイリスオーヤマの米事業。ここまで拡大してきた"本気度"に舌を巻く。米を売ると発表されたときにも驚いたが、夏に乾麺を売り出すと聞いたときもまた驚いた。しかし、その"何でもアリ"というチャレンジングな姿勢こそが、これまで市場を切り開いてきた。米事業についても、「突拍子もないことを始めた」ではなく、「これまでの経験を生かせる新たなフィールドを見つけた」ととらえたほうが良さそうだ。