買収の最終候補となったベライゾンとAT&T
昨年末時点でのフォーブスの報道によれば、買収候補として名前が挙がっていたのはAT&T/DirecTV、コムキャスト、ベライゾン/AOL、CBSなどの企業だ。このほか4月時点では、メディア企業としてデイリー・メールやタイムといった名前のほか、投資ファンドが将来的な資産価値上昇を見越して買収に乗り込むことが報じられており、これだけ見るとヤフー人気と底力は非常に大きいと実感させられる。
なお、競合にあたるグーグルやマイクロソフトは資産買収が認可されない可能性を考慮、あるいは既存の提携を重視して参戦しなかったとされる。
6月中旬現在、この資産買収合戦の最終候補となっているのはベライゾンとAT&Tの2社だとされている。最有力候補はベライゾンだとされているが、一方で同社が提示している30億ドルという金額にヤフー側は満足しておらず、これがAT&Tが付け入る隙となっているようだ。実際、4月に行われた最初のヤフーによる募集でも、ベライゾンの提示額は決して全応募者の中でも高いわけではなかったようで、おそらくは40~80億ドルのレンジでヤフー側が調整すべく交渉を進めているとみられる。
なぜインターネット事業を欲しがるのか
では、なぜベライゾンとAT&Tがヤフーのインターネット事業を欲しているかという点だが、両社の狙いは共通で、ヤフーのオンライン広告技術の入手にある。ヤフーが買収したオーバーチュアという企業を源流に持つ検索連動広告や、広告そのものであるディスプレイ広告は、いまでこそグーグルが多くのシェアを握る分野だが、もともとはヤフーが強みとしていたものでもある。これを動画やWebサービスなど、各種オンラインサービスと結びつけることで収益化を図りたいというのが2社の狙いだ。
ベライゾンは2015年初頭に米AOLを44億ドルで買収しており、このメディア事業のてこ入れにヤフーの広告技術を利用したいと考えている。AOLは各種Webメディアやコンテンツ事業を抱えており、特にベライゾン子会社であるベライゾン・ワイヤレスのモバイル事業を通じてユーザーの利用を増やすことで、さらなる収益化が可能となる。
現在、FacebookやTwitterなどのSNSを中心に、こうしたコンテンツやメディア事業の利用比率がモバイルへとシフトしつつあることは広く知られているが、このアクセスを収益に結びつけるためには通信料収入だけでなく、広告を絡めたビジネスモデルの構築が重要というのがベライゾンの考えとみられる。
一方のAT&TはDirecTVを傘下に抱えており、現在は同社の家庭向けインターネット接続サービスでDirecTVの衛星TVチャンネル契約をセット販売するのがお約束となっている。ただ、やはり今後はモバイルでのコンテンツ利用へとシフトしていくのは明らかであり、やはり収益源としてオンライン広告連動の仕組みを構築すべきというのはベライゾンと同様の考えだ。
余談だが、AT&Tは2000年代よりヤフーとの提携を行っており、ヤフーをベースにオンラインポータルサービスをユーザーに提供していたことが知られている。もともとは現在のAT&Tの母体となっている地域系通信会社のSBC Globalが始めた提携だが、AT&Tを吸収合併して携帯電話事業を完全子会社化したいまでも、この取り組みは続いている。同様の仕組みはベライゾンも後にヤフーとの提携で実現しており、契約ユーザー向けのサービスとしてポータル提供を継続している。