これが、昨年末から続いている一連の買収関連報道までの経緯だ。ただし、ここまでの状況に至るまで、キャッシュの確保にあたってはさまざまなオプションを検討していたとみられる。1つは2013年に米ニューヨーク証券取引所(NYSE)に上場を果たした中国のアリババ株で、もしヤフーが同社株式を売却すれば300億ドル近い総額となりキャッシュ確保の問題解決の近道だった。ただ、これだけの資産売却を法人税を回避して別の企業や集団へと移転させるのは難しく、早期の段階で断念したといわれる。

その後出てきたのが、それまでヤフーをヤフーたらしめていた「インターネット事業」の売却であり、これが昨年2015年12月時点での話題だ。詳細は後述するが、このインターネット事業売却にあたっては複数の企業が名乗りを挙げている一方、ヤフー側はその提示額に満足しておらず、買収額引き上げの交渉や工作を続けている。

2015年第4四半期決算のタイミングで発表したコンテンツ/サービス事業のシンプル化を経て、現在同社が抱える資産を一覧としたもの。インターネットのコア事業として、このうちのいくつかが売却対象になるとみられる

そうしたなか、今年2016年6月には「米カリフォルニア州サニーベールにあるヤフー本社の不動産資産の売却」や「3000件にわたる保有特許の10億ドルでの売却」といった話題が出てきている。

これは至急でのキャッシュ確保のほか、後者については特に「インターネット事業」売却の際の提示額つり上げが目的にあるともいわれている。ただ、同社のインターネット事業買収に興味を示す企業は保有特許そのものには興味を持っていないため、どちらかといえば現時点ではキャッシュ確保の性格が強いようだ。なおウォールストリートジャーナルによれば、ヤフーは過去3年間の特許売却とライセンス料で6億ドルの資金を得ているという。