米ヤフーが同社のインターネット事業を売却するという話が昨年2015年末あたりから盛り上がりを見せているが、現在では事業買収候補も絞られ、もう間もなく決着がつくとみられている。ヤフーが同社のコアビジネスであるインターネット事業売却を考えるに至った背景を整理しつつ、ヤフージャパンを含む今後の周辺各社動き、そしてヤフージャパン最大の株主であるソフトバンクの反応について考えてみたい。

なぜヤフーは巨額赤字に陥ったのか

米ヤフーに関して最も衝撃的だったのは、2015年第4四半期(10~12月期)の44億ドル超の巨額赤字計上だろう。低迷といわれながらも健闘していた同社の業績は2015年に入り急速に悪化し、同年第2四半期(4~6月期)には赤字に転落、その後若干持ち直すものの、第4四半期に再び赤字に転落してしまい、直近の2016年第1四半期決算でも9900万ドルの赤字となっている。背景にはオンライン広告事業での競争激化のほか、トラフィック獲得コスト(TAC)の増加によるコスト増が重石となっているといわれる。

広告において重要となるトラフィック獲得コスト(TAC)の四半期ごとの推移。2015年に入り、際立って上昇したのが見て取れる

StatCounterによる、現在の米国での検索エンジンシェア。ここでのシェアは事業規模や競合に対する競争力の高さを示す指標でもあり、ヤフーが近年大きく苦戦する理由の1つでもある

2012年に現在のCEOであるマリッサ・メイヤー氏が就任して以降、CEO交替が相次いで迷走状態にあった同社を立て直すべく、「Mavens」と呼ばれる戦略を軸に業績改善を目指していた。「Mavens」は「Mobile, Video, Native Advertising, Social Network」といった現在のオンライン業界を牽引する分野を寄せ集めた造語で、「Legacy」と形容されるインターネット草創期を牽引してきたヤフーの既存ビジネスとは異なる分野を大きな収益源としていこうというものだ。

ヤフーCEOのマリッサ・メイヤー氏が掲げる「Mavens」への事業シフトの進捗状況。既存事業依存からの脱却は進んでいるものの、会社の業績そのものへの押し上げ効果にはなっていない

実際、ヤフーが2015年第4四半期決算で示したスライドによれば、この試みは一定の効果を上げつつあるようだが、遅きに失したというのが投資家やアナリストらの多くの見解だ。そこで、同社が成長のコアと見なさなかった事業や資産については売却を検討し、現金化を急いでキャッシュフローを確保しようとしているようだ。