ATH-CKR90は、上位モデルのATH-CKR100同様、2基のドライバーを向かい合わせに配置した「DUAL PHASE PUSH-PULL<Hi-Res Audio>DRIVERS」を採用。ただし、13mm径のドライバーを2基搭載したATH-CKR100と異なり、13mm径と10.4mm径というサイズ違いのドライバーを搭載している。オーディオテクニカはこれを「高域特性の改善のため」と説明しているが、実際のところ音にどう影響しているのか興味のわくところだ。このほか、ATH-CKR100との違いとしては、ハウジングがアルミニウム製であること、ドライバーに純鉄ヨークが使われていないことなどが挙げられる。
上位モデルのATH-CKR100は音楽を濃密に描き出すタイプだが、ATH-CKR90はモニター系のスッキリとした音作りになっている印象だ。定位は明確で、解像度もこのクラスのイヤホンとしては高い。音のバランスとしては、中域、高域が強調されているのに対し低域はおとなしめ。ただその低域も、音の芯はしっかりとしている。
中高域がよく出るので、女性ボーカル曲とマッチする。平原綾香の「威風堂々」(FLAC 88.2kHz/24bit)を聴いてみると、表現力豊かな歌声が見事に再現される。ブレス音など細かい点までできっちり描写されるので歌に実在感があり、ヘタなイヤホンで聴くとアタマ打ち感が出てしまう高音域もすっきりと伸びる。
ジャズにもよい。マイルス・デイビスの「So What?」(FLAC 192kHz/24bit)は、全体の音がクリアで見通しがよく、各楽器の音が明確に聴こえてくる。高音が出すぎるイヤホンにありがちな管楽器の音のささりもなく、マイルス・デイビスのトランペットが気持ちよく鳴り響く。筆者の好みから言うと低音が若干軽い感じがするが、それゆえに絶妙なスイング感をうまく表現している部分もある。ジャズに都会的でクールな音を求める人には好まれそうだ。
全体のバランスとしては低域がおとなしめだが、前述の通り芯があるのでハードロックもいける。レッド・ツェッペリン「Black Dog」(FLAC 92kHz/24bit)は、ジミー・ペイジのギターリフもハードに響くし、ジョン・ボーナムの重たいドラムもうまく再現する。ATH-CKR100と比べると、音楽の躍動感を表現するのはやや苦手な傾向にあるが、こちらも幅広いジャンルに対応できるイヤホンと言っていいだろう。