ハイレゾ対応という点では、DSD 5.6MHzの再生が可能になったことに言及しておきたい(X88はDSD 2.8MHzまで)。デジタルアンプ「S-Master HX」を軸とすることもありPCM変換とはなるが、ハイレゾ音源再生に対応しなかったX77を思えば大幅な進化といえる。ソニーの独自コーデック「LDAC」もサポートするので、ウォークマンやXperiaなど対応機器があれば、Bluetooth経由でも高音質を楽しめる。
新開発のスピーカーユニットにも注目だ。2基のフルレンジスピーカー(サテライト端子を介しサブウーファーと接続するため「サテライトスピーカー」とも呼ばれる)は磁気回路を強化。40,000Hzという高域をカバーした振動板の採用により、ハイレゾロゴ取得を実現している。サブウーファーは2chに分離し、音の広がりを重視した設計だ。
肝心の音だが、このサイズにしては量感があり解像感に優れるというのが第一印象。特に中高域にかけてのヌケがよく、音の輪郭もしっかり描写する。ブラスセクションの光沢感やアコースティックギターでグリッサンドしたときの艶感はリアルで、新振動板の底力を実感。ジャック・ジョンソンやジェイク・シマブクロ、古いところではシーウィンドやアウディ・キムラといったハワイに縁のあるミュージシャンの曲を立て続けに再生したところ、この系統の音楽と実に相性がいい出音で、しばし仕事を忘れ聴き入ってしまったほどだ。
2基のサブウーファーと背面のパッシブラジエーターは、量感ある低音域を再現するが、ジャンルによってはやや違和感があった。ロック系・クラブ系の音源はソツなく、というより迫力を増す効果があるのだが、ジャズ系ではウッドベースが目立つうえに輪郭がぼやける印象も。堅い材質のスピーカースタンドに載せるなど対策はできそうだが、あまりセンシティブな設定をユーザに要求できない製品だけに、次期モデルの課題といえそうだ。