最近のシャープの白物家電製品から、ネイチャーテクノロジーの成果を追ってみよう。
プラズマクラスター搭載空気清浄機「S-style FP-FX2」は、これまでの空気清浄機にはない奥行き98mmというスリムさが大きな特徴だ。同じ6畳用製品の従来機種の奥行きが約180mmであったのに比べると約2分の1にまで薄くなった。このスリムさはネイチャーテクノロジーの存在なしには実現しえなかったものだ。
ネイチャーテクノロジーが空気清浄機を変えた
FP-FX2で採用した「ネイチャーファン」は、トンボの羽の形状を応用することで摩擦抵抗を小さくし、羽根周辺の空気をスムーズに流れるようにした。トンボの羽は、網の目状の凹凸に覆われており、飛行中にこの凹凸部分に小さな空気の渦が無数に発生。空気は直接羽根に当たることなく、滑るようにして流れるため、少しの力でも安定して飛ぶことができる。
「トンボのことを信じていた」
大塚部長は、トンボの羽を活用すれば、かなり薄いファンが作れることに気がついていた。そして、ネイチャーファンの開発にはトンボの羽を応用することを決めていた。
この時点ですでに、シャープはトンボの特性を利用したエアコン室内機用クロスフローファンを開発。低騒音化、高効率化で成果をあげていた。その成果をもとに、シロッコファンへの応用を模索しはじめたという経緯があっただけに、大塚部長もその成果をある程度予測できたといえる。
「従来のファンの形状では、厚みが薄くなると、空気が持つ粘性のため、風量が激減する。だが、トンボの羽は粘性に強く、これを応用すれば、厚みを薄くしても風量の減少が大幅に抑制できると考えた」と大塚部長は振り返る。
約3カ月間に渡って、計算を繰り返し、どんな形にすれば最も効率的であり、薄型化を図ることができるのか試行錯誤した。その結果、従来のシロッコファンは、約60mmの幅があったが、ファンの形状にトンボの羽を応用することで、20mmという3分の1のサイズにまで極端に小さくでき、さらに発生する騒音も大幅に削減した。
このネイチャーファンが開発されたことで、デザインの可能性にも広がりが生まれ、S-Styleという新たな需要層を開拓するための製品づくりができるようなった。つまり、ネイチャーファンがあったからこそ、実現できたデザインだったというわけだ。
「これまで空気清浄機が欲しいと思っていても、デザインが気に入らなかったり、置く場所に困るという人がいた。小型化したから性能が落ちるというものではなく、小型化しても、デザインを優先しても、性能はまったく落ちないという空気清浄機を作ることができた」と語る。