ワンルームマンションの独立性を確保しつつ、シェアハウスのように入居者同士の交流を楽しめる新しい住まいの形「ソーシャルアパートメント」。設備の充実した共用スペースが最大の売り物で、物件によっては自転車、音楽、アウトドアなどの具体的なコンセプト設定がある。入居者によるコミュニティ形成が活発なソーシャルアパートは、ビジネスの場として企業からも注目を集めているようだ。

共用スペースにこだわった共同住宅

Facebookやmixiの広まりを受けて、SNSを住空間に展開しようという着想のもとに生まれたのがソーシャルアパートだ。発案者の山崎剛氏が代表取締役社長を務めるグローバルエージェンツは、2009年2月に本格的な事業に乗り出し、この数年で首都圏を中心に35棟、約2,000戸を展開するまでに業容を拡大している。「自転車と暮らす」がコンセプトの新規物件「ネイバーズ二子玉川」は、2016年5月1日のオープン時点で入居率90%超の盛況ぶりだ。

ネイバーズ二子玉川は自転車をモチーフとするソーシャルアパートメント。エントランスに飾ってある工具類(写真左)は入居者が自由に使える。この工具は世田谷にあるカスタム自転車ショップとのコラボレーションで揃えたもの。共用スペースには自転車をテーマとするチョークアートも(写真右)

ソーシャルアパートの特徴は、入居者が集まる共用スペースの整備にコストを掛けているところだ。ネイバーズ二子玉川のメディア向け内覧会に登場した山崎氏によると、同社が運営するのはリノベーション物件がほとんど。外観は照明にこだわるくらいであまり手を加えず、共用ラウンジを中心とする室内の改装に予算を投入するのがグローバルエージェンツの方針だという。

グローバルエージェンツの山崎社長

普通のアパート・マンションであれば、リノベーションを行う際に多少のデッドスペースが生じるらしいが、グローバルエージェンツでは居住空間として使いにくい場所を共用スペースに組み込むことで、建物を「フルに使いきる」(山崎氏)ことを心掛けているという。広々とした共用スペースを用意するため、総面積が同じくらいのアパート・マンションに比べると部屋の数は少なくなる。そのため、1部屋あたりの家賃は相場よりも20%程度高く設定しているという。ちなみに、ネイバーズ二子玉川の家賃は5万7,000円から7万8,000円となっている。最多価格帯は6万8,000円だ。