ピッツァ窯、開発エピソード

そもそもタイガーがピッツァ窯を作ったのは、「業務用」の製品を拡充するというビジネス上の狙いと、「焼き」を極めていきたいという同社の強みを活かす方法を模索した結果だという。

そのなかで、「高密度炭プレート」という素材と出会う。蓄熱性が非常に高く、遠赤外線効果もある。食材の芯までしっかりと火を通すことができる。

5万トンの圧力で成形し、約3,000度で加熱する7.5mm厚の高密度炭プレートを採用。このプレートがピッツァ生地をカリッと焼きあげてくれる

本体前面下部にダイヤルを2つ装備。左の温度調整ダイヤルでは180~320℃まで設定できる

焼きを極めるという課題とこの高密度炭プレートはマッチした。生のピッツァ生地を素早く焼き上げるため、裏面はパリッと焦がし、そして食感はもちもちとした状態に仕上がる。

このKPX-S300を作るために、ガス窯のメーカーに研究にも行ったそうだ。というのも、いわゆる業務用の石窯は重さや耐熱性などさまざまな理由により、建物の1階にしか設置できないことが多いという。それを電気で、しかも100Vでとなると、火力が足りないというのがこれまでの常識だった。

タイガーではそれを覆すために、賛同してくれたガス窯メーカーで修行を積み、そして社内に宅配ピザとは異なる、イタリア風の「ピッツァ」を啓蒙していったという。そして、3年をかけて完成したのが、このKPX-S300なのだ。

表情が作れないぐらい、熱々のピッツァにかじりつく娘たち。美味しい美味しいと大好評だ

KPX-S300の想定売価は50万円前後だ。また、外壁には実際に石窯で使われるのと同じ耐熱レンガを貼っているため、非常に重く、家庭に設置するのはさすがに厳しそうだ。タイガーでは、50席以下のカフェやホテルのバイキング、また駅ナカ施設などに訴求していくとしている。

しかし、このノウハウは確実に社内に蓄積されている。北山さんも、「高密度炭プレート」を使った家庭用ピッツァ窯も考えたいと語る。家庭で最高にうまい焼きたてのピッツァが食べられるようになるかもしれない。いや、食べられるようになってほしい!

こちらはコーンやトマトなどをたっぷり載せた具だくさんのピッツァ。2分のインターバルですぐに次のピッツァが焼ける

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