――沢城さん自身、外画吹き替えの面白さはどのあたりにあると思っていますか?
沢城「世界を救ったり、世界を滅ぼしたり、一世一代の恋があったり、そういった日常生活にはない心拍数の出来事を、トレースするかのように生きられるのが、この仕事の魅力だと思います。あと、技術屋として魅力に感じるのは、外国の人なのに、最初から日本語を喋っているみたいに感じてもらえるところ。金曜ロードショーや日曜洋画劇場を観て育ってきた身からすると、ジャッキーチェンが来日してインタビューで、『こんにちは』とか喋っていると、本人なのに『ジャッキーはそんな声じゃない!』って思ったりするじゃないですか(笑)。そんな魔法が外画吹き替えにはあって、やっぱり私たちにとっては石丸(博也)さんの声がジャッキーの声、アーノルド・シュワルツェネッガーは玄田(哲章)さんの声があってのシュワちゃんというように、声優という文化がある日本の、技術屋さんたちの醍醐味じゃないかと思っています。もう一言、小さい声で言わせてもらうと、もともとあるドラマよりさらにキラキラしたドラマを乗せられる可能性が日本語吹き替えにはある。原語よりも面白い吹き替えは実際にありますし、自分自身も、それを目指していきたいという思いがあります」
――やはりあの役者の吹き替えは誰々みたいな看板ってありますよね
沢城「昨今、達者な方が増えているので、役に合わせて声優が変わっていくパターンが多くなっていますが……石丸さんや玄田さんはもちろん、ジム・キャリーなら山寺(宏一)さんで聞きたいよね、みたいなことがあれば、それは本当に贅沢な声優人生だと思います。私自身、もともと映画が好きで、この人は最初から日本語を喋っているみたいだって思えるような吹き替えに憧れて、この仕事をしていたようなところもあります。なので、いつか一人の女優さんと長く年を取っていくことができれば……そんな吹き替え冥利につきることはないと思っています」
――さて、作品についてもう少しお伺いしたいのですが、シーズン2の見どころや魅力はどのあたりだと思いますか?
沢城「シーズン1は、キャリーが能動的に動いている姿が印象的だったのですが、シーズン2は、受動的にならざるをえないぐらい、周りからものすごく影響を受けてドラマが進んでいきます。とにかく、これから出てくるキャラクターはみんな個性が強いので。その中で自分がどうしたいのかを問われながら、さらに色まみれになっていく様子が、以前よりも逆に魅力的です。ピンヒールを履きながらも、満身創痍で前進していく姿が、見どころになると思います」
――キャリーについて好きなところはどのあたりですか?
沢城「キャリーのことは全部好きだけど……たくさん泣くけど、立ち止まらないところですね。あとは、少しだけ、隠れたりはするけれど、逃げるという選択しがないところ。そして結局、まっすぐ素直にしか生きられないところ。何だかんだポジティブにちゃんと温かいお味噌汁とご飯で育ててもらったんだなって思えるぐらい、すごく愛されて育った子なんだなっていうのがわかるところ。そして、世界一可愛いところ(笑)。後半辺りになると、母性があるところを加えてもいいかもしれないです。やはり長女だから泣くことが解決じゃないと思っているところ。そして、お姉ちゃんとして妹のことをすごく大事に思っているところ……」
――べた褒めですね
沢城「(笑)」
――役と一緒になって進んでいるとおっしゃっていましたが、沢城さん個人として共感できるのはどのあたりですか?
沢城「私が飲まれてしまっているのか、ドラマがよくできているのか……自分の十代を見ているようで恥ずかしくなってくるシーンがたくさんあるんですよ。たとえば、恋に関する間違い方とか……だからダメなんだってそういう人は、みたいな。自分が興味を持っている世界を生きている人がカッコ良く見えちゃうところとか、自分よりも堂々と物を言う人を見ていると、いつの間にかそれが自分の正義みたいに思えてくるけど、いざ自分がそれを振りかざしてみると、全然使い物にならなかったり。パパに対しても、パパが頭ごなしにって思っているけど、全然自分のほうが頭ごなしに物を言っているとか。そういう十代の女の子にありがちなところがすべて含まれているので、私だけではなく、観ている方もみんな、自分なのかキャリーなのかがわからなくなるんじゃないかなって思いますし、共感できるんじゃないかなって思います」
――ごくありふれた人物ではないはずなのに、意外にみんなと同じなんですね
沢城「時々、夜、ポエマーになっちゃうところとか(笑)。それほど他人の物語ではないと思います。とびきり素敵な格好をしていて、とびきり可愛いから、別世界の人に見えるけど、ひとつひとつの要素を見ていくと、本当にみんなと変わらない女の子なんですよ。ただ、とびきり可愛いだけなので、目を瞑っていれば実は自分の話なんだと思います」
――それでは最後にファンの方へのメッセージをお願いします
沢城「『マンハッタンに恋をして』というドラマのシーズン2が始まりました。シーズン1を観てくださった方は、絶対に損をさせないので、もう1シーズンお付き合いくださいと大きな声で言いたいです。こんなに可愛い女の子の話があるんだって、初めて知ってくださった方や『セックス・アンド・ザ・シティ』のような大人の話は好きだけど、あまり高校生の話は……と思っていらっしゃる方も、まったく問題なく、自分の物語としてシェアできると思います。女性からすると、ちょっと可愛い色のリップが塗りたくなったり、もう一声ふわっとしたスカートが履きたくなったり、そんな魔法にかかる輝きがあるドラマなので、まだ観ていない方は、ぜひチェックしてみてください。よろしくお願いいたします」
――ありがとうございました
沢城みゆきがキャリー・ブラッドショーの声を担当する『マンハッタンに恋をして ~キャリーの日記~ 2』は、全国無料のBSテレビ局・Dlifeにて放送中。
(二)毎週月曜21:00~21:57
(字)毎週日曜24:45~25:35
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