その他の注目ポイント
Android関連のセッションが多いにもかかわらず、他のトピックに話題をとられがちなのが「Android OS」そのものだ。現在、「Android N Developer Preview」の名称で一部デバイス向けに開発者向けのプレビュー版の提供が行われているAndroid Nの次期リリースだが、Google I/Oのタイミングでようやく正式名称が発表され、最終的に盛り込まれる機能の紹介が行われることになるとみられる。基本的には現行のAndroid 6.X "Marshmallow"のデザインや機能を踏襲することになると思われるが、一方で前述の「Android VR」のような仕組みもサポートし、Googleの将来戦略に沿った形での機能強化も引き続き行われていくことになる。
またAndroid Nに関連して興味深いのは、Chrome OSの最新動向だ。Pichai氏はChrome OSのような仕組みが継続していくことを強調する一方で、Androidアプリの動作を可能にする機能の搭載もほのめかすなど、2つのクライアント向けOSの間でGoogleの戦略は揺れている。Google I/O 2016が継続かどうかを含む両OSの転換点になると予想する人は多く、何らかのアナウンスが期待される。それが「Androidへの吸収」か「さらなるChrome OSへのテコ入れ」かはわからないが、米国などの市場ではすでに人気商品となりつつあるChromebookの今後の動向に注目したい。
もう1つ気になる動向がAndroid Payだ。現在同サービスの提供が行われているのは米国のみだが、すでに英国とオーストラリアでの2016年内でのサービス提供が予告されており、発表が間近だとみられている。英Telegraphでは、英国を中心にチェーン展開を行っているPret A MangerでAndroid Payのタグが出現したことを報じており、同国でのサービスインが間もなくであることを物語っている。おそらく、Google I/OのタイミングでAndroid Payの提供拡大について何らかの発表があるとみていいだろう。実際に使い勝手がいいかは別として、Android Payを使ってTfL (Transport for London)が運営するロンドン市内のバスや地下鉄に乗車することも可能になる。このほか、Android Payに関しては複数のセッションの存在が確認されており、おそらくは「Web決済を中心としたエコシステム拡大を目指しての開発者らの取り込み」を目的とした情報提供も行われるとみられる。
最後に、Google I/Oの内容そのものとは直接関係ないが、同イベントとしては初の「iOS向け公式イベントアプリ」の提供が行われていたり、世界の企業の時価総額で長らくトップに君臨していたAppleをGoogleが何度か僅差で抜く現象が報告されていたりと、昨今のiPhone販売減少やAppleの株価急落を受けたかのようなトピックが話題になっている。すでにプラットフォーマーやメーカーの競争の舞台はモバイルデバイスやクライアントOSの世界から、もう一段上の階層へと移りつつあり、Googleの動きもまたそれを見据えたものとなりつつある。こうした変化に留意しつつGoogle I/Oを眺めていると、また別のトレンドが見えてくるだろう。