ここで一つ、面白いことがある。iPad ProはiPhoneシリーズよりもより高性能なプロセッサを備えており、今回4Kカメラの撮影から編集までのワークフローが1台で達成できるまでに進化した。しかし、カメラの性能は、AppleのiOSデバイスの中で最も高い、というわけではないのだ。

9.7インチiPad Proには、1,200万画素のカメラは搭載されたが、動画でのiPhone 6s Plusのような光学手振れ補正は搭載されなかった。機能的にはiPhone 6sやiPhone SEと同じではあるが、カメラの性能としては、iPhone 6s Plusよりは下に位置する製品であるということだ。

結果的には、iPhone 6s Plusが、Apple製品のカメラの性能としては最高峰。噂レベルでは、次期iPhoneにはデュアルカメラなどの搭載も指摘されており、5.5インチサイズのiPhoneは今後もカメラ最高峰のポジションを保持していくことになるだろう。

では、光学手振れ補正の有無がそんなに違うのか、という問題だ。結論から言えば、かなり差が出る。

iPhone SEにもiPad Proにもソフトウェア的な手振れ補正機能は備わっている。しかしiPhone 6s Plusには、光学的に手ぶれを防ぐ仕組みが備わっている。つまり、センサーに光を取り込む時点ですでに手ぶれを軽減した状態になっている、ということだ。

筆者が普段から使っているiPhone 6s Plusと、iPhone SEやiPad Proでの動画撮影を比較すると、手持ちでの撮影では、比べ物にならないほど、iPhone 6s Plusの方が安定した映像が得られる。通常の手持ちをしていても、ちょっと左右にパンしても、歩きながらの撮影でも、iPhone 6s Plusの映像の方が、より揺れを抑えた絵が撮影できる。

2015年4月ごろ、ソニーα7 IIやオリンパスOM-D E-M5 Mark 2など、5軸手振れ補正のカメラでのビデオ撮影を試したことがあった。体が揺れても、速いスピードでパンをしても、映像が安定してついてくる感覚は素晴らしかった。iPhone 6s Plusの光学手振れ補正は、こうしたカメラの動画撮影と同じくらい効果的だと感じたほどだった。

iPad Proでは、4Kビデオ3ストリームを同時に流しながらの編集ができる

せっかく4Kビデオの編集に長けた処理性能を持つiPad Proなのに、光学手振れ補正を盛り込まなかったのは、何かのミスか、iPhone 6s Plusの「カメラ」としてのキャラクターを際立たせたかったのかの、いずれかだろう。