自律するIoTがもたらす世界
Jetsonの登場でIoTに人工知能がもたらせることはわかったが、本当にそこまで必要なのだろうか、という声もあるだろう。確かに、インテリジェントな処理で自動で動作する機器はすでに多数存在している。それらが人工知能に置き換わることでさらにメリットがないのであれば、確かに無駄にも見える。
しかし、人工知能が実現する最大のメリットは、真の意味で「自律して動作する」ことにある。たとえば自動運転の掃除機ロボを例に考えてみよう。これまでは赤外線や音波など、各種センサー類で周囲の環境を把握し、障害物を避けつつ、ゴミを掃除してきた。これが人工知能搭載になると、センサー類に加えて、カメラで取り込んだ映像をリアルタイムに解析し、落ちているものがゴミなのか、100円玉や指輪なのかを識別できる。ゴミならばそのまま吸い込み、100円玉や宝石はゴミとは別の容器に受ける、といった「賢い」掃除機が可能になるわけだ。
あるいはドローンの例を考えてみよう。現在、ドローンはGPS情報などを使ってルートを決め、オートパイロットで飛ぶことができるが、鳥が障害になったり、ほかのドローンが近づいてきても避けることができない。しかし、人工知能を搭載したドローンならば、自動的に障害物を判断して避け、元のルートに戻って飛行を続けることができるわけだ。
「Jetson TX1」はクレジットカードサイズ大で省電力。これによりドローンにも搭載可能。ドローンの自律的な動きを可能にする(画像左:ドローン、画像右:ドローンに搭載された「Jetson TX1」) |
もしこれが、いちいちモバイル回線などでサーバーのデータと突き合わせて認識していたりしては衝突は免れないが、Jetsonのような高度な処理能力を搭載していれば、機器単体で危険を回避できる(未知の障害物であれば、あとでサーバ上で学習を更新すればいい)。センサー類だけに頼った自動運転は、急激なアクシデントに対応できないが、人工知能であれば学習を通じて性能をどんどん高めていくことができる。
Jetsonが持つもうひとつの強みは、JetsonがほかのNVIDIA製品と同じGPUアーキテクチャで製造されていることだ。NVIDIAではGPUコンピューティング向けに「CUDA」という開発環境を用意しており、ディープラーニングや画像認識といった機能向けの情報も多数揃っている。このため、Jetsonを使えば効率良く、素早く開発が進められる。学習を繰り返すサーバーから、推論を行う機器に至るまで、CUDAプラットフォームで統一できるため、開発も管理も容易になるわけだ。
今後、人工知能はどんどん身近なものになり、あらゆる場面で人間の生活をサポートするものになるだろう。そのとき、賢い家電や自律制御のロボットは、JetsonがもたらすGPUコンピューティングパワーが実現することになるだろう。
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