360度カメラと動画が普及の鍵を握るか
そのヒントとなるのが、先のサムスンの新製品発表イベントに、ザッカーバーグ氏が登壇したことにあるといえよう。ザッカーバーグ氏はその檀上で、「VRは次のプラットフォームになる」と話し、フェイスブックでは今後、ソーシャルVRアプリに力を入れていくことを打ち出している。
そもそもフェイスブックがOculus VRを買収して傘下に収めたのは、スマートフォンの次となる新しいプラットフォームをVRに見出したためとも言われている。フェイスブックはVR HMDを、ゲームなどのコンテンツを楽しむプラットフォームとしてだけでなく、新しいコミュニケーション体験を実現するプラットフォームと捉え、システムやデバイスの開発に投資を進めているわけだ。
またOculus VRは、自社でHMDを手掛けるだけでなく、サムスンと共同で、スマートフォンを用いたVR HMDのGear VRも開発している。このことからは、仮想空間での良質なVR体験を提供するだけでなく、普及しているスマートフォンを活用することで、より幅広い層に対してVR体験を提供することを狙っていると見ることができる。
そして、現状のスマートフォンを活用したVRを広める鍵として、サムスンやフェイスブック、そして他の多くのメーカーが期待しているのが"動画"ではないかと考えられる。実際、サムスンやLGは今回、HMDだけでなく360度撮影可能なカメラも発表しており、カメラとスマートフォン、そしてVR HMDを用いたVR体験の提供に力を入れようとしている。またFacebookも、昨年9月より360度動画の投稿を可能にするなど、VRで動画を楽しめる仕組みの構築に力を入れている。
ゲームなどのインタラクティブなコンテンツを動作させるには確かに高いハード性能が必要だが、360度カメラで撮影した動画の再生であれば、そこまでの性能は必要ない。それでいて、360度カメラによる映像をVRで再生すれば、あたかもその場にいるかのような臨場感ある体験を手軽に得ることができ、距離や時間を超えた共通体験の実現に一歩近づくこととなる。そうした360度動画がSNSに広まってくれば、VR HMDがコミュニケーションツールの1つとして認識され、広まっていくと考えられよう。
もしVRがゲームの範囲内でとどまってしまえば、その広がりは限定的なものとなってしまう。スマートフォンという誰でも持っているデバイスで、しかも日常的なコミュニケーション用途を主体としてVRが利用されるようになれば、その広がりは非常に大きなものとなり、可能性も大きく広がることになるだろう。VRの可能性を広げる上でも、スマートフォンを用いたVRがユーザーにどのような体験を与え、それが受け入れられるかどうかが大いに注目されるところではないだろうか。
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