Apple Payは、単なるプリペイド型のサービスではなく、設定するデバイスそれぞれにクレジットカード決済用のトークンを保存し、これを使って店頭やオンラインでのカード決済を行う仕組みだ。決済にはTouch IDによる指紋認証が行われ、利便性を高めつつ、磁気カードで横行していたスキミングや盗難による不正利用の被害を抑える点をメリットとしている。
店舗側は、カード利用の際の決済手数料に変化はない。しかし既存のカード決済端末を、NFC対応のものに置き換える必要がある。小規模な商店にとって、その設備投資をしてまでApple Payをサポートすべきか。2014年10月と最も早くサービスがスタートした米国ですら、判断は難しいものがある。
まだまだ使える店が少なく、顧客の「便利だ!」という声を見つけられずにいるのだ。
イギリスで実現していた公共交通機関へのApple Payでの乗車のような、交通機関での利用はよい戦略だ。Suicaもそうだったが、人々が生活の中で必ず利用する交通機関で利用できるようにし、これを他の購買に押し広げる戦略は有効だと感じる。
しかしながら、そもそも米国では、公共交通機関が主力の移動手段となる都市は限られ、サンフランシスコ周辺もクルマ社会のままだ。つまり、公共交通機関での普及が、決済サービスの普及とさほどリンクしていないため、Suica的な発想を抱きにくいのだ。最近、エクソンモービルのガソリンスタンドがApple Payをサポートするようになった。クルマ社会においては、ガソリンが交通に関連する支払い、と言えなくもないが……。