法人向けに活路

普及に向けては大胆な意見もある。先とは別のメーカー担当者(輸入代理店)は、「日本の医療費負担が上がれば、"予防"に意識が向き、一般層への普及もありえる」と話す。リストバンド型ウェアラブルは欧米で普及が進んでいるが、それは医療費負担と切り離せない問題があるからだ。

同氏の意見は正論だが、販売側がどうこうできる問題でもないのが痛いところ。しかし、同氏は続けて、法人向けに活路があると話す。「2014年は7法人に販売したが、2015年になってから販売先は40法人に膨れ上がった。一法人あたり100~200個程度出荷している」(輸入代理店担当者)。当の担当者によると、リストバンド型デバイスの機能を利用して、睡眠時間などを把握し、従業員が規則正しい生活送れているか否かのチェックに役立てたいというニーズが高まっているという。

最近では、従業員の健康を重要な経営資源ととらえる「ウェルネス経営」という手法が注目されており、リストバンド型デバイスは、それを実現するデバイスとも位置づけられそうだ。個々人のログの取得が別の問題をはらむ恐れはあるが、普及・拡大に向けたひとつの道にはなるだろう。

万人ウケする動機付けが必要

さらなる普及拡大に考えを巡らせるなら、もっと意外なものが答えになるかもしれない。それは生命保険だ。たとえば、リストバンド型デバイスから得られるバイタルデータを生命保険の保険料負担と連動させる仕組みについてだ。業界関係者は「どういったバイタルデータをどう保険に反映するのかという課題はあるが、そうした保険商品の実現の可能性としてはありえる」と話す。

現状、リストバンド型デバイス普及の課題は、万人ウケする購買動機が弱いことだ。生命保険のようにお金に絡むメリットは、多くの人にとって明確な利用メリットになりえるため、普及に向けた弾みとなる可能性はありそうだ。

日本よりも米国でリストバンド型デバイスが普及しているのは、医療費負担が高いという事情は先に説明したとおり。リストバンド型デバイスの普及には、いままでにない利用者にとっての新しい価値と仕組みが求められそうだ。