AMDのハイエンドGPU「R9 Fury」シリーズの中で、唯一オリジナルクーラーモデルが登場しているのが無印Fury。現状、そこまで多くのモデルが販売されているわけではないが、上位のFury Xがリファレンスデザイン & 水冷設計というところ、Furyなら空冷クーラーという点で手が出しやすい存在だ。
Furyの新顔として登場したNITRO RADEON R9 FURY 4G HBM PCI-E H/D-D/DP3 TRI-X OC+(以下、NITRO)は、Sapphireとしては2モデル目の無印Fury搭載モデルだが、同社のフラグシップとなる「NITRO」を冠した上位モデルだ。スタンダードモデルの「R9 FURY 4G HBM PCI-E HDMI/3DP TRI-X」(以下、TRI-X)との違いは、クーラー、基板設計、そしてGPUクロックだ。
既存モデルとの大きな違い - クーラー、基板設計、GPUクロック
3つの違いのうち、まずはクーラーから見ていこう。NITROが搭載するクーラーは、3連ファンが特徴の「TRI-X」。スタンダードモデルでも同じくTRI-Xを搭載しているのだが、NITROに搭載されたものの方が背が高く、ヒートシンクも大きい。この点で冷却性能も高いと推測できる。
内部のヒートシンク部分は前後に分割され、間を5本のヒートパイプが繋いでいる。ヒートパイプのうち、1本は極太の10mm径。GPU接触面は同素材を採用している。ヒートシンクを固定するためのダイカストフレームもあり、裏面にもバックプレートを設けた設計で剛性は高く、重量もかなりのものだ。
基板設計もオリジナル設計になっているようだ。フェーズ数はリファレンス仕様と同じ6フェーズ構成だが、1フェーズあたりの電流量を50Aから60Aへと拡大しているという。6フェーズで最大360Aが供給できる設計で、OC時に要求される大電流をサポートする一方、通常の使用においては、同じ負荷でも1フェーズあたりの負担を下げ、発熱も抑えられる。
このほか、搭載部品では16,000時間の耐久性を誇る高耐久コンデンサに加え、こちらも高耐久を誇るブラックダイアモンドチョークの採用が特徴だ。
続いて動作クロック。NITROのGPUクロックは最大1,050MHz。TRI-Xモデルを含むリファレンス仕様では最大1,000MHzなので、50MHzほどオーバークロックしている。ここは単純にパフォーマンスの面で効いてくるだろう。
いまのところ定格クロックというしばりで見れば、NITROよりも高いクロックを設定しているFury搭載モデルは国内販売されていないようで、買ってきてそのまま使うという場合においては、最強のFuryカードといえる。
一方で、メモリに関しては定格どおり。動作クロックは500MHz(データレート:1GHz)だ。FuryシリーズのGPUコア「Fiji」では、メモリには広帯域幅が特徴のHBMを採用しており、クロックは500MHzまたは1GHzだが、メモリ帯域幅はこれまでのGDDR5よりも広い。
なお、Radeon R9 Fury製品に関しても、Sapphireのオーバークロック & ステータス監視ツールの「SAPPHIRE TriXX Utility」が利用できる。オーバークロックに関しては、GPU/メモリ双方のクロック、駆動電圧、そしてパワーリミットなどが設定可能。さらにロガー機能なども搭載している。ほかのメーカーと同様、ハデなUIを採用しているが、わかりやすいレイアウトでチューニングはしやすい印象だ。
そのほか特徴的なところをピックアップしていこう。従来までCrossFire用端子のあった付近にあるのはBIOS切り替えスイッチ。これはFuryの標準機能だが、NITROではSapphireロゴ & LED付きのプッシュ・プッシュスイッチに改められていて、極小のスライドスイッチだったリファレンスカード(注:Fury Xの場合。Furyにはリファレンスカードがない)と比べると使い勝手がよい。定格とOCのように設定を分けるといった方法で活用できる。
映像出力端子はDisplayPort 1.2×3、HDMI 1.4a×1、DVI×1というレイアウト。クーラーの厚みは2スロットを若干はみ出す。隣接スロットにカードを挿すことは可能だが、エアフローを考慮すると空けておくほうがよいだろう。