文書の作成力
文書作成力は文書校正機能と改行削除機能がポイントとなる。前者はジャストシステムが発売する文章校正支援ツール「Just Right!5 Pro」の校正エンジンを搭載し、指摘機能を強化した。
例えば、前バージョンでは空白を含む単語は正しく認識されず、誤字や脱字、同音語誤りの指摘が過剰気味だったが、エンジンの刷新で改善されている。さらに、助詞誤りの指摘機能を新たに搭載した。Just Right!5 Proとほぼ同等の機能を備えることとなったが、一太郎2016は表記ゆれや括弧の対応など個別に実行しなければならず、校正ツールとしては少々不便に感じられた。
メール本文を一太郎2016に貼り付けた際、不要な改行が挿入されることがある。この際に使う補助機能として用意されたのが「まとめて改行削除」機能だ。実行時は同名のダイアログを呼び出し、各設定項目で削除を実行できる。
例えば「段落単位で改行を残す」を選択すると、段落の区切りを判別するため、文章レイアウトを保持しながら改行の削除が可能。「空行」はコピー&ペースト時に複数の改行が挿入されてしまった際、指定した行数に縮めるというものだ。一部のテキストエディタは同様の機能を備えているが、一太郎2016をメインに使っているユーザーには便利な機能となるだろう。
最後はEPUB関連機能。近年の一太郎シリーズを支えるツールパレットにEPUB専用パレットが加わった。考えてみれば今まで用意しなかったのが不思議なくらいだが、あくまでもEPUB編集は一部のユーザー向けという割り切りがあったのだろう。「EPUB編集ツールパレット」は初期状態でオフになっており、設定変更を必要としている。
「EPUB編集ツールパレット」の「書籍編集」は作業の流れにそって項目を並べている(写真左)。「EPUB編集ツールパレット」を使用可能にするには、ツールパレットのオプションダイアログから「基本編集フェーズでEPUB編集ツールパレットを利用する」をオンにする(写真右) |
上図のように「書籍編集」はテンプレートを開き、文書スタイルや表紙を決めて、最後に出力形式を選択するように、電子書籍を作成する手順に沿って項目が並んでいる点は高く評価したい。EPUBテンプレートを新たに20点追加し、全40種の表紙ギャラリーを新たに搭載した。
一太郎2016限定機能として「らくらく新聞テンプレート」も用意されている。これは既存のテンプレート機能に「新聞・会報」を追加したものだ。一太郎2016には新聞用フォントとして、「モトヤUP新聞明朝Otf W2」「モトヤUP新聞ゴシOtf W3」を搭載しているため、本格的な会報を作る際に役立つだろう。
ざっと駆け足で一太郎2016の新機能を追いかけてきたが、最新のPC環境に沿いながら、一太郎シリーズが持つ日本語ワープロという根幹の部分も継承したバージョンアップといえる。必ずしも新バージョンでドラスティックに変化するのではなく、"変わらない良さ"を持つのも大事であることに改めて気づかされた。万人が恩恵を受ける訳ではないが、高DPI対応強化などPC環境を整えたユーザーには魅力的なバージョンアップとなるだろう。
阿久津良和(Cactus)