横並び解消の鍵となる「HLR」「HSS」とは
そうしたMVNO間の横並び問題を解決する鍵として注目されているのが、「HLR」(Home Location Register)と「HSS」(Home Subscriber Server)と呼ばれるものだ。
HLRやHSSは、いずれも「加入者管理データベース」などと呼ばれているが、要するにスマートフォンに挿入して利用する、モバイル通信を利用する際に必要なICカード「SIM」を管理するための仕組みである。
SIMには電話番号をはじめとして、通話や通信をするのに必要なさまざまな情報が記録されているが、それを管理しているのがHLRやHSSなのである。そしてHLRやHSSは、SIMを挿入した端末がネットワークに接続する際、そのSIMが正しい契約がなされているものかどうか、どのネットワークが利用できるかなどの認証をしたり、どの基地局に接続しているのかなどを登録したりするのに使われており、携帯電話のネットワークを円滑に利用する上で非常に重要な役割を果たしているのだ。
現在のところ、このHLRやHSSは、MVNOが回線を借りている大手キャリアが保有しており、MVNOは大手キャリアが管理しているSIM、例えばNTTドコモのMVNOであれば、NTTドコモからSIMを借りてサービスを提供している。つまりHLRやHSSの部分をキャリアに依存しているため、キャリア側が提供するSIM、ひいてはそれに紐付くネットワークやサービスしか利用できないのである。MVNO側がサービスを独自に設計し、提供することが難しいのには、そうした理由があったわけだ。
タスクフォースを受けて自由なサービス設計へ
そこで現在進められているのが、キャリアが持つHLRやHSSを開放し、MVNO側がHLRやHSSを独自に持てるようにしようという動きである。
2015年に実施され、大きな話題となった総務省の「携帯電話の料金その他の提供条件に関するタスクフォース」においてもこの点について議論がなされており、このタスクフォースの結果から提示された「スマートフォンの料金負担の軽減及び端末販売の適正化に関する取組方針」においても、HLRやHSSなどの加入者管理機能を「開放を促進すべき機能」として位置づけられ、総務省が事業者間協議の促進を図るとしてされている。
では、HLRやHSSがMVNOに解放されると何ができるのかというと、MVNOが独自にSIMを発行できるようになり、特定キャリアのネットワークに縛られることなく、より自由なサービス設計ができるようになる。例えばNTTドコモだけでなく、auやソフトバンクのネットワークを組み合わせたサービスを1枚のSIMで提供できるようになったり、海外にSIMを持ち出した際、より割安なキャリアの料金プランで利用できるサービスを提供できたりするようになる。