――今回のアルバムでは、「愛のプリズン(特撮ver.)」と「7人の妖」がリード曲になっています

大槻「その2曲がリード曲ということになっていますが、『音の中へ』もいいなって思っています。"特撮"はけっこうマニアックな曲が多いんですけど、ちょっとiPodのCMソングにでも使える曲がほしいなって思っていたところもあって、まさに『音の中へ』はそういう曲になっています」

――「愛のプリズン(特撮ver.)」はセルフカバーですね

大槻「これは『監獄学園』というアニメの主題歌なんですけど、作ったときからこれは名曲だと思っていて。実際にアニソンとしてもかなり評価が高かったんですよ。オリジナルは神谷浩史さんをはじめとした人気声優の方が5人で歌っていらっしゃるんですけど、"特撮"のバージョンも聞きたいという声が、むしろアニメファンの方からたくさんいただいていて、自分としてもぜひやってみたいと思っていました。今まで作った歌詞の中で、この曲はエポックメイキングになるんじゃないかと思っています。『愛のプリズン』の前後で分かれるんじゃないかと思うくらい、自分で言うのもなんですけど、『上手いことやったな』っていう歌詞になっています」

――それはどのあたりですか?

大槻「リスナーが茶化されているような、でも深みにはまっているような、でもやっぱりかどわかされているような、結局のところよくわからないけれど、まやかされていることはたしかである……みたいなところですね。コミカルだけど、アイロニカルでシリアスでシュールで、最終的には何だったんだろうっていう詞になっていると思います。これは僕がずっと目指していたもので、ナッキーが作ってきた楽曲が非常にシンプルで力強いもので、そこに"ダダッダッダ脱走脱走"というフレーズをのせたとき、これはいけるなって。『監獄学園』というのがまたとてつもない漫画で、その原作とアニメの力も含めたトータルで、ちょっとした高みに到達したのではないかと思っています。だから、ここからシフトをチェンジして、また違う方向を目指すことができる。そんな記念碑的な一曲になっています」

――こういったタイアップ曲の場合、どのようなスタンスで制作にあたるのですか?

大槻「アニソンに限らず、オファーを受けて作る楽曲には、制約があり、そして設定がある。だから、ボキャブラリが決まってくるので、むしろ書きやすいです。たとえば『愛のプリズン』は、"監獄学園"という女の子ばっかりのお色気スクールに囚われている5人の男たちの話って決まっているわけですよ。『7人の妖』は、7人の若手声優さんたちが自分を妖怪にみたてて作った架空のキャラソン。そういう設定があれば、ほとんどの部分は決まってくるので、非常に書きやすい。楽曲をポンと渡されて、どんな詞を書いてもいいよって言われるほうが大変です」

――タイアップ曲のほうが作りやすいんですね

大槻「"特撮"のオリジナル曲でも、こんな詞にしてくれって作曲者から頼まれることがあるのですが、こちらはなかなか作曲者と作詞者のイメージがあわなくて、『オーケン、本当に良い詞をありがとう!』って気に入ってもらえる場合と、何のリアクションも返してもらえない場合がある。まあこれはお互い様なんですけど」

――作曲者のイメージにあうかどうかで詞の評価が決まるわけですから、詞を書く大槻さんのほうが大変ですよね

大槻「でもそれも、結局『慣れるやろ』ですよ(笑)。リスナーだって、アルバムを聴いたばかりのころは染み込まないんだけど、歳月をかけて染み込んでいく。大人になると、若い頃はピンと来なかった曲が、良いなって思えることが増えてくるじゃないですか。ただ、困ったことに、大人になると好きなアーティストの新譜もなぜかピンとも来ないんだよね(笑)。何だよっていうくらいピンと来ない。25年聴いて良くなって来たんだから、この新譜が良くなってくるのは75歳くらいかって……。そういう問題がありますね」