Appleは1月30日より中国本土で33番目にあたるApple Store青島万象城店をオープンした。Appleは2016年半ばまでに40店舗展開を実現すべく、大量の広告マーケティング予算投入も含めて中国での販路拡大を進めているが、おそらく以前までのような年率50~70%のような急拡大は見込めず、多くて20~30%程度の水準に留まる可能性が高いと筆者はみている。理由としては、iPhoneのような高級端末が購入可能な中国内の富裕層にはすでに端末が行き渡りつつあること、そしてミッドレンジでもやや高級なクラスの製品が機能面ではiPhoneを凌駕しつつあり、ブランド以外の面で必ずしもiPhoneが優位に立つという状況が難しくなってきている。

Apple Store青島万象城店

中国以外の地域でもテコ入れが必要だ。欧米など先進国でのハイエンドなスマートフォン市場はすでに飽和したといわれて久しいが、東南アジアなどの地域と同様にミッドレンジ以下のスマートフォン市場のボリュームがだんだんと拡大してきており、もしAppleがさらにiPhone自体の売上を伸ばしたいと考えるなら、こうした市場も視野に入れる必要が出てきている。さらに日本では、間もなく実質0円販売が終了し、過度なキャッシュバックを交えた販売やMNPによる引き抜きが落ち着くとみられており、おそらくこの恩恵を最も受けていたiPhone販売への影響は少なくないと考えられる。マイナス12%となった直近の日本国内での売上だが(この数字はiPhone以外の製品も含む)、今後2~3年でさらに減少がみられる可能性が高い。

ここで採れるAppleのiPhone売上増加作戦は次の主に3つだ。

(1) 人口と需要の多い新しい地域への本格進出
(2) 先進国での市場拡大に向けてミッドレンジ以下のモデルを投入
(3) さまざまなニーズに応えるため製品バリエーションを増加

このうちの(1)については、インドが最有力候補だとされている。実際、"公式なデータ"としては中国の人口は14億人程度といわれるなかで、インドも12億人以上の人口を擁しており、潜在需要が高い。しかもスマートフォン普及率は2~3割程度とまだ低い水準に留まっており、今後の経済成長を考えれば進出する余地もある。Apple進出初期の中国市場との類似を語るアナリストもいる。一方で、世界銀行のデータによる2014年の人口当たりのGDP (GDP per capita)は米ドルベースで中国が7590ドル、インドが1582ドルと開きが大きく、仮にインド経済が急成長したとしても中国ほどには人口あたりの購買力は上がらず、さらに購入可能な層も限られる可能性が高い。

また、中国とインドでのスマートフォンの平均販売額(ASP)を比較したデータによれば、近年の経済成長で購買力が増して1台あたり255ドルまで増加した中国に対し、インドでは130ドル近い水準まで下がり続けている。これを見る限り、インドでのスマートフォン市場の主戦場は100ドル前後の「ローエンド」となる。AppleのiPhoneは1世代前以上のモデルでも400~500ドル程度の販売額であり、このインドの平均水準よりはるかに高い。そのため、インドにおけるこうしたハイエンド製品は中古または富裕層が中心で、Appleが市場を開拓するには「さらに低価格の新興国向けモデルを用意する」必要に迫られるかもしれない。