「零戦里帰りプロジェクト」により復元された零式艦上戦闘機二二型(零戦)が1月27日にテスト飛行を実施した。同機は同日14時12分に海上自衛隊鹿屋航空基地を離陸、約7分間の初飛行に無事成功した。当日にお伝えしたニュースに引き続き、飛行した零戦とプロジェクトの詳しい解説、そしてフライトの様子をレポートする。
ニューギニアのジャングルで発見された「零戦二二型」
今回飛行した零戦は、詳しく言うと「零式艦上戦闘機二二型」。零戦と言えば、真珠湾攻撃でも使用され戦争序盤から活躍した「二一型」と、中盤から生産された「五二型」が有名だが、そのどちらでもない。型番は1つ目の数字が機体の開発順序、2つ目の数字がエンジンの種類を意味している。大まかに言えば二二型は、二一型と同じ機体に、五二型と同じ「栄二一型」エンジンを搭載した機体ということで、過渡的な機体だ。1万機以上製造された零戦のうち二二型は600機足らずで、ややレアな機体と言えるかもしれない。もちろん、現在飛行可能な零戦二二型は、この1機だけだ。
この零戦が発見された場所はニューギニア島。日本軍の飛行場が攻撃を受けた際、地上に駐機されていた機体の胴体に被弾して真っ二つに千切れたため、放棄されたままジャングルに埋もれたような状態で発見されたという。「零戦里帰りプロジェクト」を手掛けたゼロ・エンタープライズ・ジャパン取締役の石塚政秀氏は「撃墜されたものではない」と強調し、この零戦が空中戦では不敗の機体であるという誇りを感じさせた。
零戦はアメリカのサンタモニカ航空博物館の手でアメリカへ運ばれた後、復元作業が行われた。飛行可能な状態を目指したため、機体の約8割は図面をもとに、部品をひとつひとつ手作りで新規製作されたレプリカ。また「栄二一型」エンジンは劣化が激しく修復不可能なので、同時期のアメリカ製エンジン「R-1830」を搭載している。
ロシア製の零戦?理由は「メートル法」
このレプリカ製作作業だが、実際に行ったのはなんとロシアの航空機メーカー、ヤコブレフ社だという。ヤコブレフ社は大戦中の機体復元に実績があるほか、特に重要なのはロシアの航空機製造が旧日本軍と同じメートル法で行われていることだった。アメリカでは材料も工具も全てインチ規格なのだ。
2000年に映画「パールハーバー」の撮影に使用された際、現在の塗装が行われた。実際に真珠湾攻撃で用いられた零戦は灰色の二一型なのだが、アメリカでのイメージに合わせて戦争後半の色である緑色に塗られた。空母「赤城」の搭載機を意味する「AI-112」という機体番号も映画のために記入されたもので、この二二型の本来の塗装とは異なっている。