弦楽器のふくよかな鳴りを表現することは苦手かもしれない。たとえば、千住真理子「イザイ 無伴奏ヴァイオリン・ソナタ(FLAC、96kHz/24bit)」は、バイオリンの音が若干金属的に聴こえてしまう。また、ATH-ESW950同様、大編成のオーケストラ曲などは苦手だ。音が真ん中に集まってやや窮屈さを感じてしまう。

イヤーパッドが異なるためか、ATH-ESW950より側圧が強い気がする

ポーチの素材やデザインはATH-ESW950と異なる

興味深かったのは、低域のしまりが今ひとつの音源をスッキリと気持ちよく聴けることだ。B.B. King「The Thrill Is Gone(FLAC 96kHz/24bit)」は、低域重視のヘッドホンで聴くと面白みの無い演奏に聴こえてしまうが、このヘッドホンで聴くとギターが前面にグっと出て抜群のノリが堪能できる。

まとめ

どちらも基本性能が高い、という印象だ。ATH-ESW950は実売で40,000円を超すが、その独特な温かみのあるサウンドには代えがたい魅力がある。幅広いジャンルに対応できるので、汎用性の高い高音質ヘッドホンが欲しいという人にオススメの一台だ。ただし、スッキリとしたモニター系の音が好きな人には、そのウォーム感を醸し出した低域が逆に耳についてしまうかもしれない。

ATH-ES750は、キレがありヌケのよい音が好みの人にマッチする一台。音の立ち上がりがよいので、疾走感が命となるロックなどによく合う。また、中域がよく出るのでボーカルをメインに聞きたいという人にも最適だ。総合的に見て、30,000円以内で入手できるヘッドホンとしては完成度が高いといってよいだろう。