NECパーソナルコンピュータ 第一商品開発部 設計技術部の梅津秀隆氏

NECパーソナルコンピュータ 第一商品開発部 設計技術部の梅津秀隆氏は、タブレットとモバイルパワーキーボード側の設計に関する説明を行った。同氏は、NECPC各製品の設計および技術部分を担当している。

NECPCが考えるデタッチャブルPCとは、Windowsタブレットとして求められる要求項目と、従来式ノートPCとして求められる性能の絶妙なバランスを取る製品。この上で、重量増にもなるキックスタンドを排して利用できるところに力点を置いたという。

また、全体で900gという企画側の要求に対し、開発側は「ハードルを上げて」、タブレット本体も、モバイルパワーキーボードも、共に400gを切ることを技術的なターゲットとした。

タブレットとノートPCで望まれるスペックのバランスを重視して設計。また重くなるキックスタンドはつけない、デタッチャブルに見えないというのがこだわりポイントだ

第三世代製品と並行してデタッチャブル製品を開発したが課題が多く製品化に至らなかった

先進の製品は従来技術だけでは作れないので新技術、新パーツを投入しなければならないと判断

企画上のターゲット重量は、本体500g未満、モバイルパワーキーボードと本体合わせて900g未満。さらに重量に関しては企画からの要求以上のハードルを設定。そして本体とキーボードのバランスも考慮した

そもそも、Androidタブレットで使われるSoCなどと異なり、WindowsタブレットはCPUやチップセットといったハードウェアの関係で、重量的に不利である。それを技術で補ったのがLAVIE Hybrid ZERO 11.6型モデルとなる。

同社では、2015年1月の第三世代機(13.3型)の開発と並行して、11.6インチデタッチャブル機の試作も行っていたが、満足のいく内容にならなかったという。そこで厚みを削るため、液晶タッチパネルをFFF構造からFF2構造にしてフィルムを1枚減らし、さらにタッチフィルムと液晶を一体接着したダイレクトボンディング構造を採用。バックパネルの材質や構成の見直しでも軽量化を進めた。

他にも、バッテリセルを新設計するなど、従来使っていなかった機構や部品を新開発、採用し、薄型軽量を実現したという。タブレット本体上部に配置するアンテナ類は、Intel RealSense 3DカメラとLTEアンテナの両配置に苦労し、結局3DカメラはLTEアンテナと排他搭載になったというエピソードも披露された。

今回投入された新たな技術やパーツなど。重量と厚さ、堅牢性という、本来ならばトレードオフされる要素を全て兼ね備えるため、新技術や新しい設計が取り入れられた

タッチパネル電極を一枚のフィルムの両面に入れるFF2構造を採用。ちなみにペン入力する場合はガラス板が必要になるので、今回は採用せず

液晶とタッチパネルを一体化してエアギャップをなくし、バックライトも変更。さらにミドルフレームで抑える筐体一体型構造を採用して薄型化

タッチに支障が出るのでバックカバーとベゼルの接合も変更。この構造だと強度低下につながるので事前シミュレーションと試験で対応している

従来のバッテリでは厚さと幅、バッテリライフの両立が実現できないのでバッテリメーカーに新型セルを依頼。ちなみにタブレット、キーボード共に7.2V 1900mAhのバッテリを使用していた

LAVIE Hybrid ZEROの一大特徴のマグネシウムリチウム素材は今回プレスに加えて鍛造パーツを使用

一方で超軽量パーツが不要な部分には普通のマグネシウム合金も併用している

温度が上がるのが問題になるだけでなく、金属筐体の場合は熱が伝わりやすいのであまり温度が上がるのもいけない。そこでグラファイトシートを使用して熱の分散化を図っている

通常のノートPCの場合はアンテナ基板を使うが、これはベゼル幅と強度に影響を与える。そこでフィルム基板をプラホルダーに巻きつけるようなタイプのアンテナを使用

3DカメラモデルとLTEモデルがあるためアンテナの配置には苦労し、結局3DカメラモデルはLTEアンテナと排他搭載に。コストアップに繋がるが大きさを重視した

見た目とキーボードの利便性を上げるために、リフトアップ構造に。パッと見にはデタッチャブルに見えないデザインになっている

タブレットとキーボードの重心を考慮し、タッチしても倒れないバランスを実現している

合体のガイドピンが長いと見た目もカッコ悪く、挿入しにくい。素材と形状を工夫して容易に装着できる設計になっている

内部フレームは今までやっていなかった薄さ0.4mmに挑戦。高さの低い部品も併用して更なる薄型化を実現している