マルチタッチと比べると、全く異なるといっても良い動作になる3D Touchの「押し込む」という操作方法。述べてきた通り、その動作を使う必然性がなく、これまでの操作方法との連続性も薄い新しい操作方法を活用するにはどうしたらよいか。
そこで、これまでのiOSのインターフェイスにあまりなかった要素、カスタマイズ性の出番ではないか、と考えている。
「電話」や「メッセージ」、「Facebookメッセンジャー」の「クイックアクセスメニュー」は、お気に入りやよく連絡する相手が表示される仕組みになっている。そのため、家族や恋人に素早くメッセージを送りたいときには、その相手のスレッドにショートカットできて便利だ。
もっとも電話かメッセージの場合、ホーム画面を左にスワイプして表示されるSiriによる推測候補からアクセスしたり、もしメッセージのやりとりが続いていれば通知をタップするなど、その他の方法もたくさん用意されているため、「クイックアクセスメニュー」が特別便利だという話にはなりにくい。
ただ、このメニューの中身を自分好みにカスタマイズできるようになると、その機能を知っている人なら積極的に使い始めるのではないか、とも考えられる。
ちなみに、UIのカスタマイズについては、iOSがAndroidから遅れている最も大きな分野だ。しかもAndroidとの競争において、Appleにとって最も興味・関心が薄いテーマといえるだろう。ただ、操作方法や見た目そのものをガラッと変えるのではなく、ユーザーが手に馴染むようにショートカットを編集するのであれば、さほど問題なさそうに思えるのは筆者だけだろうか。
前述の「Facebookメッセンジャー」のように、アプリによっては、「クイックアクセスメニュー」の中身を動的に変化させているものも既にある。より具体的なアクションをこのメニューに登録できると、よくやる定型作業の効率化などに寄与し、生産性の面でも効果が現れるはずだ。
松村太郎(まつむらたろう)
1980年生まれ・米国カリフォルニア州バークレー在住のジャーナリスト・著者。慶應義塾大学政策・メディア研究科修士課程修了。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。近著に「LinkedInスタートブック」(日経BP刊)、「スマートフォン新時代」(NTT出版刊)、「ソーシャルラーニング入門」(日経BP刊)など。ウェブサイトはこちら / Twitter @taromatsumura