小ぶりだが、入母屋破風や花頭窓が美しい彦根城

一方、姫路城に続けとばかりに世界遺産登録を目指す城がある。琵琶湖東岸にたたずむ彦根城だ。自治体を挙げて世界遺産登録に向けて運動しているが、彦根城にとってハードルが高い。

というのも、ユネスコの諮問機関で世界遺産登録の審査を行っているICOMOS(イコモス)の審査内容が厳格になっているからだ。それは“世界遺産のない国を優先的に”“1国で1案件を審査する”といった具合だ。そして何よりもハードルを高くしているのが姫路城の存在。すでに日本の城郭として姫路城が世界遺産に登録されているため、同じ日本の城郭として“二番煎じ”とイコモスに捉えられているふしがある。

松江城が長いあいだ国宝指定を受けられなかったのは、同じ複合式天守の彦根城がすでに国宝に指定されていたためと、前回のレポートで解説したが、皮肉にもその構図が世界遺産のステージで彦根城に降りかかっているわけだ。

この膠着状態を打開するには、いかに姫路城と差別化するかがカギとなる。幸い彦根城には併設された日本庭園「幻宮園」や、江戸時代の様相を色濃くのこす城下町がある。これらは姫路城にはないもので、世界遺産登録に向け、天守閣とセットでいかにイコモスにアピールできるかがポイントとなるだろう。

「幻宮園」(左)や城下町(右)など、姫路城にはない魅力がある(写真はともにPIXTAより)

世界遺産登録に向けての取り組みは足踏みをしているものの、観光客の集客は好調だ。2014年度は、ピーク時に迫る74万人以上が彦根城を訪れた。築城400年祭が開催され、その祭りのマスコットを務めた「ひこにゃん」が爆発的なブームとなった2007年の88万人にはおよばないものの、70万人超の来城者は堅調といえる。

城下の飲食店スタッフによると「確かに“ひこにゃん”ブームの時と比べれば、観光客が減った感は否めないです。ですが、近年は外国人の方が結構たずねてきてくれています」と、やはりほかの城郭と例外ではなく、インバウンド観光客が増加傾向にあるという。ただ、姫路城と比べれば、外国人の知名度は低いといわざるをえない。京都・大阪に近いという好立地ではあるけれども、新幹線駅が隣接していないという弱点もある。

今後、インバウンド観光客の増加をねらうには、やはり世界遺産へ登録され、ネームバリューをグッと上げる必要性がある。日本人としてはひとつでも多くの世界遺産が増えることは願うところなので、自治体も含めた今後の彦根の取り組みに期待したい。

過去最高のインバウンド来日数にわく日本文化

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