これほどインバウンドが押し寄せる背景には、姫路という立地のよさが挙げられる。京都・大阪という外国人が好む都市に近く、しかもそれらの都市から日本の“名物”ともいえる新幹線で移動できる。ツアー客のみならず、京都・大阪をベースに宿泊している外国人が観光するスポットとして、これほどの好例はほかに見当たらない。
姫路駅南口を出ると目抜き通りの先に天守閣が鎮座し、ランドマークとしての存在感を堂々と放っている。それを目指して歩を進めている多数の外国人をみれば、バスツアーではなく、鉄道を利用して姫路城にやってきたフリーのインバウンド観光客がいかに多いかがうかがえる。
展示物を撤去し観光客のトラフィックをスムーズに
新生・姫路城は、観覧の方式も大きく変わった。改修前は、天守閣内に甲冑や火縄銃など多くの展示物が並んでいたが、グランドオープン以降はそうした展示物のほとんどを撤去。市は「天守閣の素のままの姿を見学していただく」としているが、回遊性を高めるねらいもあるとみられる。というのも、次から次へと観光客が入城してくる現状では、展示物を置いてしまうと、大渋滞を引き起こしてしまうのは確実だからだ。
入城してみると、要所要所にスタッフが立ち観光客を誘導。スムーズに順路を進むことができ、30分ほどで天守閣見学が終了した。確かに押し寄せる多数の観光客をさばくには、展示物なしのほうが合理的だ。ただ、以前の姫路城を知る“一お城ファン”としては、なんとなく寂寥感に包まれてしまった。
グランドオープンからわずか260日ほどで220万人の来城者ということは、単純計算で1日に8,500人ほどが城を訪れていることになる。市が採った観覧方式は妥当だと理解するしかない。