スマートフォンのSIMロック解除の義務化や、政府からキャリアに向けた更なる通信コストの削減要求といった要因から、いわゆる「2年縛り」がなくなるのでは、と見る向きも多い。ユーザーにとっては自由にキャリアを選択する余地が増える反面、必ずしもメリットばかりではない、という指摘もある。実際のところ、2年縛りがなくなったら、ユーザーの負担はどのように変わるか考えてみたい。

2年縛りがある理由

携帯電話の2年縛りは、一定期間の継続利用を約束する代わりに、ユーザーにとって通常よりお得な割引を提供する契約、という位置付けだ。割引対象は利用料金の場合と、端末料金の場合があり、最近は両者が一体になっているケースも多い。特に端末料金の割引については、日本でiPhoneをはじめとするハイエンドスマートフォンが、世界の平均と比べても異常なほど普及した一因だと言えるだろう。

確かにお得な話ではあるが、なぜこのような制度が始まったのか。それは携帯キャリア同士が顧客の囲い込みを始めたからだ。携帯電話の普及初期は、縛りを設けなくても新規の顧客はいくらでも期待できた。しかし携帯電話のユーザー数が人口を超えるほどになるに従い、新規ユーザーの獲得よりも、既存ユーザーを手放さないことと、ほかのキャリアから顧客を奪うことに重点が置かれるようになる。

特にMNPが開始されると、電話番号を維持したまま他社に移ることができるようになったため、そのままではより設備や条件のいいキャリアに顧客を取られてしまう。そこで、魅力的な端末を安く購入できるようにするなどしてユーザーを引きつけ、さらに一定期間の解約を封じることで安定した収入の確保を、そして解約しにくくすることで長期的な利用につなげようという作戦なわけだ。

月々の利用料金が安くなる代わりに、途中で解約すると違約金を払わねばならず、また契約が24カ月でも、端末代の支払いが終わるのは購入時から25カ月後になる(=24カ月で解約するとまとめて2カ月分支払う)。

NTTドコモの「月々サポート」

契約は自動継続する設定のため、端末代とのズレもあって、解約のタイミングがわかりづらいという問題があり、消費者庁に寄せられる解約関連のクレームは毎年数千件に及ぶと言われている。2年縛りへのクレームが増えるにつれ、総務書も問題の解消に着手。有識者会議が契約の見直しを提言するに至っている。