急こう配な坂も越えて
コース周辺の標高は海抜約350~450m、コース内の標高差は約100mなので、「比較的楽に走れるのかも」と思っていたが、決して長くはないがやや勾配のある坂が小刻みに続くので、想像以上に身体に応える。18km地点から25km地点でいったん舗装された道を走るのだが、それを過ぎれば後は基本的にジープロードとなる。
半分は過ぎたものの、もうすぐとは言えない残り15kmあたりは精神的にも辛いところ。その気持ちをくみとってくれたのか、今まで一番多い数の応援者が待ち構えていてくれた。そんな温かい応援を受けると、「きっと完走できる。もう少し頑張れる」という気持ちになってくる。なのだが、このすぐ後に続く200~300mの上り坂はコース一番の難所であり、誰もが歩いて上ることに。「『この坂を頑張れ! 』という応援だったのかな」ということに思い当たった。
この"難所"を越えればあとはほぼフラットなコースとなる。だからと言って走るのが辛くなるようなシティーロードではなく、自然の風景と音を楽しめるカワラウリバーからレイクワカティプに続く湖畔を走るので、辛くて立ち止まってしまったら、深呼吸をしてまた前に踏み出せばいい。応援してくれる人たちの数が増えてきたら、クィーンズタウンの中心地・ゴールはもうすぐだ。最後の1kmは中心地内を走るため、沿道からいろんな人たちの声援や拍手を受けながらとなる。
ゴール後は芝生の上で
ゴールではMCが最後の声援を送り、時にはナンバープレートの情報から名前と国籍を読み上げてくれることも。ゴールゲートの向こうでフィニッシャーの完走メダルを受け取ったら、あとは好きなだけ芝生の上でごろんと寝転んだらいい。会場にはピザや寿司、コーヒー、フレッシュジュース、ジェラートなどのブースも出店されており、おいしいエネルギー充電には事欠かない。
フルマラソンのみ、13.25km地点で2時間30分の関門が設けられているが、あとは16時までにゴールすればOKとなっている。つまり、フルマラソンなら7時間15分以内、ハーフなら8時間以内、10kmなら8時間15分以内にゴールということになる。制限時間が長く設定されていることもあり、完走率はフルマラソンもハーフもともに99%とかなり高い。
クィーンズタウン国際マラソンはIT化が進んでおり、オフィシャルアプリを通じてランナーがいつ計測ポイントを越えたかすぐに分かるようになっていた。応援する側にとっても便利なサービスである。また、完走した後は登録したメールアドレスに自分が写っている写真や動画のサンプルが届けられ、購入はただダウンロードするだけとなっていた。
実際に走った感想として、特に前半は短いものの勾配のある坂も続くので、気軽に楽しめるという範囲以上にハードなコースのように思われた。ランナーのレベルもやや高いと言ってもいいだろう。
とは言え、トレイルランのような過酷さはなく制限時間も長いので、マイペースで絶景を楽しみながら走るにはうってつけのレースのように思われる。何より、街で応援してくれる人たちは温かく、参加者同士の国際交流も楽しめる。記憶に残るレースになることは請け合いだ。2016年大会は11月19日の開催を予定しているので、気になる人はスケジュールの調整を。