劇場文化都市、渋谷に
最後に語られたのは、渋谷という街への期待だ。
中島「渋谷って非常に魅力的な街で、どういう人がそこに集まってくるのか。人はたぶん人に寄せられてくるんじゃないかなと。そういう意味では、マップなんかも、団塊の世代のような年齢の高い方はここにいますよとか、若い人は竹下通り、セレブは青山かなとか。"こんなところにこういう人がいる"ということ、渋谷そのものの理念・ニーズを分析して、渋谷に来ることで人生が楽しくなる、豊かになるような、渋谷自体が大きな劇場装置になっていけばいいなと思うんですよね。徹底的に人の流れや分布を調べ尽くして分析すれば、並列的なことがたちあがってくると思います」
松田「もともと渋谷ってエンタテイメントの街だなと思っていて、中島さんがおっしゃるように、渋谷という街全体が劇場じゃないかな。アイア 2.5 シアターとしては2.5次元舞台の聖地になって、世界に発信していけるようになればと思います」
佐藤(流)「役者として色々なことを勉強させてもらいました。渋谷という街で舞台をさせていただくことが大変光栄だと思いましたし、もっとグローバルに、世界中に2.5次元舞台を発信していくように頑張っていきたいと思いました」
岡本「劇場都市渋谷というテーマで長時間ディスカッションしてきたのですが、私からひとつ提案がありまして、"劇場文化都市渋谷"というスローガンはどうかなと思っています。渋谷の街と劇場、街の人と役者さんの関係、若い人たちをどう育てるか。これは一過性のエンタテイメントを渋谷に持ってこようよというものではなく、むしろ劇場というものをコアにしながら、関わる全員が文化をつくっていく要素だと思うんですよね。地道に継続して、文化をつくっていこうという、決意表明の日ではないかと思います」
まとめ
2020年のオリンピックに向けて、東京全体が観光地として強みを必要としている。その中で渋谷が滞在型コンテンツを強化していこうとしているのは、有効な試みといえるのではないだろうか。以前マイナビニュースでも2.5次元ミュージカルの海外展開について取材を行ったが、今回も渋谷の劇場がプロデュースした作品を海外に持っていく試みについて、積極的な姿勢が伺えた。
ただし、シンポジウムでは短期的なインバウンド需要だけではなく、より長期的に「劇場文化」を担う街としての渋谷像が示された。若者カルチャーを多く生み出してきた渋谷が、どのようにして新たな文化を育てていくのか。劇場関係者のみでなく観光業に携わる者のヒントとなるような発言が多く存在したのではないだろうか。