外国人観光客をどう取り込むのか
そして見逃せないのは、インバウンドの視点だ。多くの外国人観光客で賑わう渋谷区では、渋谷駅前の「青ガエル観光案内所」に演劇の問い合わせを受けることも多いという。なかには、ミュージカル「セーラームーン」のチラシを「指紋をつけないで」という注文付きで、数十枚持って帰る外国人観光客もいたそうだ。
各劇場とも、公式サイトの各国語対応や劇場での字幕設備などを充実させる傾向にあるが、観光客がすぐにチケットを手に入れる環境には課題が残る。パルコ劇場の佐藤氏からは、ひとつの提案がなされた。
佐藤(玄)「最近、前売りのチケットってあんまり売れないじゃないですか。なかなか発売しても売り切れる公演は少ないです。初日が開けてから評判を見たりとか。パッといきたいときに、渋谷の劇場同士をつなぐような、当日券を買える場所や、インフォメーションセンターが、観光協会さんにある時代があるといいなと」
アメリカのブロードウェイ、ロンドンのウエストエンドでは一帯の劇場をまとめた、観光者でも使いやすいチケットオフィスがある。渋谷区でも導入を進めて欲しいという意見には、壇上でも多く賛同を得られていた。
若い人材を育てていくことが重要に
今回のシンポジウムでは、劇場に携わる若い人材についても話が及んだ。
佐藤(流)「ずっと僕はここで何回も何回も公演をやらせてもらって、起きたら渋谷に来るみたいな、そんな日々が続いたりするんですけども。渋谷の街って、海外のお客さんだったりとか、色々な層がいて、そこでひとつのエンタテイメントをつくっていく側として、色々なお客さんに知ってもらえる場所だと」
松田「渋谷に来るって、ちょっとテンションがあがりますから。やっている側からすると、行くのがちょっと足が重いな~という劇場もあるなかで、やっぱり渋谷という土地の持つパワーは、エンタテイメントをステップアップしてくれているんじゃないかなと。ここに来るまでで、既に楽しいですからね。多分役者もそうだと思います」
海野「東急シアターオーブは、人を育てるのをすごく頑張っています。"案内さん"という仕事に学生さんが70人くらい登録してくれてるんですけど、みんな役者になりたい、もしくは制作者になりたい若者です。その若者たちにむけて上演しているキャスト1人、スタッフ1人を呼んだ交流会をはじめて、今後のミュージカルスターやプロデューサーをつくりたい。またお客さんを長期的に育てたいということで、教育委員会の力を借りまして、渋谷区にいる小学生30名にステージ体験を提供するなど、将来のミュージカルスターやお客様をつくりたいとしてやっています」
岡本「"佐藤流司が生まれた街、育った街渋谷"という発信もあるわけですよね(笑)。非常に息の長い話ですけど、そういうことも重要だと思います」