QualcommのSoC「Snapdragon」を搭載したシングルボードコンピュータ「Dragon Board 410c」が、いよいよ国内で発売される。ArduinoやRaspberry Piなどシングルボードコンピュータは、IoT分野のみならずホビイストからも熱い視線を集めており、重視するチップベンダーも多い。その状況下、Qualcommが本製品にコミットする意図は? 関連技術を踏まえつつ、分析してみよう。
DragonBoardに秘められた意図
名刺サイズの「シングルボードコンピュータ」が注目される理由はいくつかある。プロトタイプの開発が容易なセンサーデバイスとして、ドローンや各種家電の頭脳として、あるいは学習用として、そのサイズ感とコスト感はコンピュータに対する既成概念を一変させるものであり、IoTの裾野と可能性を広げる役割を果たしてきた。
そこに登場した「DragonBoard」。発表は2015年3月と半年以上前にさかのぼるが、今回満を持して日本市場に投入される。11月16日から予約受付を開始、11月末から出荷予定と、エンドユーザーの手に渡る時期は少し先だが、パシフィコ横浜で11月18日から開催されているIoT技術の総合技術展「IoT Technology 2015」(Embedded Technology 2015と同時開催)では、各社のブースで姿を目にすることができる。
そのDragonBoardの中核をなすSoCは、Qualcommの主力製品「Snapdragon」。日本のキャリア向けAndroid端末に豊富な採用実績を持ち、グローバルでも高いシェアを誇るSoCだ。同じARMアーキテクチャのSoC(Broadcom製)を積む「Raspberry Pi」と競合しうる製品であり、Intelの「MinnowBoard MAX」あたりも意識していることは確かだろう。
しかし、Qualcommという企業の立ち位置および「IoT」を意識してDragonBoardという製品を見ると、その見方は大きく変わる。鍵となる技術のひとつが「AllJoyn」だ。DragonBoardについて話を進める前に、IoT Technology 2015で開催されたセミナー「AllJoynフレームワークを使ったInternet of Everything(IoE)の開発」をもとに、その狙いを推し量ってみよう。