2つめは、東京電力のサービスエリア以外への進出だ。東京電力は、関東エリアでは100%の市場占有率を持つが、それ以外の地域のシェアは0%となる。まさにホワイトスペースともいえる市場が広く存在するのだ。

関東エリアでは、東京電力の打ち出す施策によっては、独禁法などの制限を受ける可能性があるが、それ以外のエリアでは、新規参入事業者の立場と同じ。東京電力でも、「関東エリア以外では、自由な手の打ち方ができると考えている。関東エリアとは営業手法やプロモーション手法も変わってくるだろう。関東エリアとは違った料金設定も想定される」(東京電力の眞田室長)とする。

ここでは先に触れた提携戦略も重要な意味を持つ。

東京電力が提携を発表しているロイヤリティマーケティングは、全国に約6950万の顧客を持ち、同様にソフトバンクは約3700万、カルチュア・コンビニエンス・クラブは約5300万の顧客を持つ。重複する顧客もあるが、この提携によって、全国の幅広い顧客にアプローチできる環境が整うというわけだ。

東京電力東扇島LNG基地

そして、3つめが、2016年の電力小売全面自由化に続く、2017年のガス小売全面自由化をきっかけにした取り組みである。

すでに自由化されている年間10万立方メートル以上の大口需要家市場においては、東京電力はすでに4位に入る取引規模を持つ。さらに輸入LNGは、都市ガスの原料として利用されているが、発電用燃料としても活用されているため、電力会社はすでにその調達ルートを確保しているともいえる。すでに輸入調達量では、東京電力が国内トップとなっている。 こうした優位性を生かしながら、電気とガスとを組み合わせたエネルギーのトータル活用提案が行えるというわけだ。ガスの小売全面自由化は、東京電力にとっては、重要な“攻め”の切り札になるといえよう。

こうしてみると、東京電力にとって新規参入事業者から“守る”だけでなく“攻め”の領域も少なくない。東京電力は攻守両面から、電力小売全面自由化の市場で戦うことになる。そのバランスが、独り立ちすることになる同社の電力小売事業の成否を左右することになりそうだ。

全面自由化前夜……夜明けを待つ電力会社の動静

電力小売自由化目前! 過熱する首都圏の需要争奪戦の現状【後編】
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東京電力が高効率LNG火力発電への切り換えを急ぐ理由
●“守り”ではなく“攻め”へ! 電力小売自由化に向けた東京電力の戦略